フルセットの大接戦も…最後はデンソーエアリービーズに押し切られて惜敗【NECレッドロケッツ】

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【NECレッドロケッツ】

 ここまで8勝2敗と着実に勝ち星と勝利ポイントを積み上げ、2位につけるレッドロケッツ。レギュラーラウンドの前半を締めくくる一戦で、敵地の北ガスアリーナ札幌46に乗り込み、6勝3敗で4位のデンソーエアリービーズと対戦した。折しも北海道は新型コロナウイルスが再び感染拡大を見せつつあり、開催自体が危ぶまれていた状況。金子監督は試合後、「このような時期に札幌でお客様を迎えて試合ができたことを大変嬉しく思います。すべての皆様に感謝を伝えたい」とコメントしている。その思いは選手やスタッフも同じだったはずだ。

「このような時期に札幌でお客様を迎えて試合ができたことを大変嬉しく思います」と語る金子監督 【NECレッドロケッツ】

「子どもたちに夢や希望を与えられるような選手に…」小島

 札幌で生まれた小島は、小学3年時に地元の山の手南ジュニアでバレーボールを始め、中学1年の夏まで過ごしたという。

 この日はクラブの後輩にあたる子どもたちが応援に駆けつけた。小島は「拍手が聞こえてきたし、名前の入ったプラカードを作ってきてくれて歓迎されているのを感じました」と喜ぶとともに、「子どもたちに夢や希望を与えられるような選手になっていきたいと改めて思った」と話す。Vリーグは今もなお、以前のような開催形式や観戦スタイルに戻っていないものの、現地で自分たちのプレーを見てもらえることは、やはり選手にとってこれ以上ない大きな力になる。

クラブの後輩となる子供たちが観戦に訪れ気合が入る小島 【NECレッドロケッツ】

 今季から札幌をサブホームタウンとし、この日が札幌でのホームゲーム初開催となったデンソーも気合十分だった。モチベーションの高いチーム同士がぶつかり合えば、白熱した好ゲームになるのは必然だった。

接戦をものにした第1セット

奪ったセットへの手応えを語った古賀 【NECレッドロケッツ】

 第1セットを25-23で制したのはレッドロケッツ。快勝した前節のように山田、山内のサーブが走り、4-1、8-4とリズムをつかんだ。中盤には古賀のバックアタックの後、ネリマンと澤田の必死のつなぎから島村がブロードで切り返して3連続得点。2回目のテクニカルタイムアウト以降に逆転を許したが、20-21からネリマンのサービスエースや古賀のブロックですぐに再逆転し、接戦となったセットをものにした。古賀は「取ったセットはブロックディフェンスもサーブも機能していた」と確かな手応えを感じていた。

ところが、続く2セットを20-25、19-25で落としてしまう。第3セットはスタートから入った曽我がバックアタックを突き刺し、上野はブロードを決めるだけでなく、自らのサーブ直後に好レシーブを見せて、曽我やネリマンの得点につなげた。金子監督が言うように「良い場面を作るシーンもたくさんあった」が、絶好調のときと比べると、「オフェンスを組織的にうまく機能させられなかった」という面があったのも否めない。それぞれのセットでは途中でセッターが澤田から塚田に代わったものの、流れを変えるまでには至らなかった。

ネリマンの活躍で劣勢を挽回し、第4セットを奪い返すも最後はデンソーに軍配。

良い攻撃の流れをつくった澤田のトスワーク 【NECレッドロケッツ】

 第4セットも序盤は山田のサービスエースやネリマンの2本のブロックで4-1と好スタートを切ったが、そこから相手に押し込まれ、3点ビハインドで最初のテクニカルタイムアウトを迎える。そうした苦しい状況で存在感を発揮したのが、ネリマンだった。

 パワフルなバックアタックで3連続得点を挙げると、ブロックでも相手の攻撃をシャットアウト。劣勢を一気に挽回して、逆に3点リードで2回目のテクニカルタイムアウトに入った。その後も古賀のスパイクや山田のブロックで走り、25-17でこのセットを奪い返した。

第5セット5連続得点の起点をつくった山田 【NECレッドロケッツ】

 雌雄を決する第5セットは、さらに緊迫した手に汗握る攻防が繰り広げられた。4-6から曽我と山田のブロック、さらに壮絶なラリーを古賀の強打で制して5連続得点を挙げたあたりは、完全にレッドロケッツペースだった。しかし、相手も諦めずに懸命に食らいついてくる中、古賀が「最後のセットでしっかり決め切れなかった」と悔やんだように、13-11からのあと2点が遠かった。北海道への凱旋試合となった廣瀬は最終盤にワンポイントで登場したが、見せ場を作ることはできずに13-15。フルセットの激闘は、最後の最後でデンソーに軍配が上がった。

「ホームで今日の借りを返したい」古賀

ポイント1を手に入れたことはポジティブにも捉えられる 【NECレッドロケッツ】

 小島も古賀も試合後は「悔しい」と声をそろえた。「相手どうこうというよりは、自分たちがやってきたことを出せなかった」(小島)、「苦しい時にチームでいかに勝つかが私たちのチームの課題。1レグの最後で負けてしまいましたが、何か変われということだと思う。チーム全員でまた成長していけるように頑張りたいです」(古賀)

 それでも金子監督は「普通に行けば、1-3で負けていた試合を4セット目で取り返せたのは大きかった」とも語っている。勝ちたかったのはもちろんだが、ポイント1を手にできたことをポジティブに捉えてもいいだろう。次週のとどろきアリーナでのホームゲームでは、5日に再びデンソーと対戦する。古賀の「今日の借りを返したい」という力強い言葉を信じたい。

「我々はいろいろなことを経験し、それを修正しながらまた新たなことにチャレンジしていくチーム。」金子監督

川崎フロンターレ、川崎ブレイブサンダースに刺激を受ける金子監督 【NECレッドロケッツ】

 競技は違えど、同じ川崎市を本拠地とするサッカー・J1リーグの川崎フロンターレが25日に2年ぶりのリーグ優勝を果たした。バスケットボールB1リーグの川崎ブレイブサンダースも悲願の優勝に向けて奮闘している。金子監督はそれについて、「川崎は非常にスポーツが盛んな地域ですし、他競技のチームの活躍は我々のモチベーションにつながっています。ただ、フロンターレさんは圧倒的な強さで優勝しましたが、我々はいろいろなことを経験し、それを修正しながらまた新たなことにチャレンジしていくチーム。我々は我々の戦い方でしっかり戦っていきたい」と述べた。

 12月4・5日でレッドロケッツは年内最後のホームゲームとなり、同本拠地の川崎ブレイブサンダースとのコラボレーションも発表されている。次はレッドロケッツが魂のこもった熱いプレーで、川崎市民やサポーターを沸かせ、歓喜をもたらす番だ。

「次のホームでは絶対に勝ちます。チームメイトとともにもっと感動するようなプレーをみなさんに見せたい」ネリマン

この日38得点をマークしたネリマン。合流の遅れを取り戻し、すっかりチームに溶け込み、ムードを上げる存在に。 【NECレッドロケッツ】

■Hot Topics ネリマン・オズソイ

 トルコ代表として、オリンピックや世界選手権に出場。Vリーグでは昨季まで3シーズンを過ごしたトヨタ車体クインシーズで2度の得点王に輝いた。そうした実績が単なる過去の栄光ではないことを、私たちはこの約1ヶ月の間に見せつけられている。
 
 フルセットの大熱戦となったデンソーエアリービーズ戦でも、73本のアタックを放ち、ブロックやスパイクを含めて38得点をマークした。いずれもチーム最多の数字だ。金子監督が「4セット目の苦しい状況で、ネリマンがムードを上げてくれた」と語ったように、5-8から15-12と形勢を挽回した場面では、一気に6点を量産。圧巻のバックアタックで相手に脅威を与えた。チームは惜しくも敗れたものの、ネリマンは「両チームともに素晴らしいプレーがたくさんあった。活躍できたのは良いボールをセットしてくれるセッターのおかげ」とセッターの澤田や塚田に感謝した。

 今季からレッドロケッツに加入したが、新型コロナウイルスの影響でチームへの合流が遅れた。「開幕前にみんなと一緒にまったく準備できなかったのが残念。開幕して戦いながら慣らせてきた感じです」と言うが、「みんな前向きで向上心がすごい。NECに入れてすごくうれしいし、このチームに対してポジティブな思いを持っています」と、今はすっかりチームに溶け込んでいる様子だ。

 トヨタ車体時代からネリマンは、試合に出れば必ずと言っていいほど安定した活躍をする選手だった。その秘訣を自身は「食事にしても心の持ちようにしても日常生活から『私はプロだ』ということを忘れないようにしている。今、32歳ですが、年齢に関係なく新しいことは学べるし、何歳になっても向上できると思っています」と分析する。さらにつけ加えれば、「日本のバレーはラリーがすごく続き、いつもボールが空中にある。私はそういうバレーが好きで、それが私が日本でバレーをし続ける理由」だという。

 この日の敗戦後、「勝つときもあれば負けるときもある。負けたときにそこから何を学べるかがバレーボールの醍醐味であり、大切なこと」と語ったネリマンは、「次のホームでは絶対に勝ちます。チームメイトとともにもっと感動するようなプレーをみなさんに見せたい」と早くも気持ちを切り替えていた。


(取材・文:小野哲史)
11月のホームゲームでも得点を重ねたネリマン。動画は古巣・トヨタ車体戦のネリマンの『#ネット際』スローハイライト
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著者プロフィール

V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN(V1女子) に加盟する女子バレーボールチーム。日本リーグで優勝1回、Vリーグでは優勝7回、天皇杯・皇后杯1回、黒鷲旗でも2回の優勝実績がある。2021年、これまでの歴史を継承しながら、更なる進化を遂げるためチームのリブランディングを実施し、ホームタウンを神奈川県川崎エリア、東京エリアとした。チームのエンブレムであるロケット胴体部の三層のラインは、ロケットに搭乗しているチーム、サポーター、コミュニティを表現。チームに関わるすべての皆さまに愛され、必要とされる欠かせない存在になることを目指す。

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