【第7回】Jリーガーが考える!大学サッカーで集客をするには…?

ブラウブリッツ秋田
チーム・協会

【©法政大学体育会サッカー部】

今シーズンからブラウブリッツ秋田に入団した法政大学出身、ミッドフィルダーの下澤悠太です。

前回はSNSを用いて認知・興味を持ってもらうための広告について書いてみました。そして今回は実際に人を集めることに着目した内容になっていますのでお楽しみいただけるかと思います。

集客(大学サッカーver.)

あくまでもここからの話は多くの人が大学サッカーに興味を持ってくれたことが大前提の話です。

仮に選手の1人1人が多くの人にとっての"誰か"になったり、口コミなどを通じてSNS場での大学サッカー関連の投稿見る機会が増え、少しづつ大学サッカーに興味を持ってくれた人が増えてきた状況を仮定して話していくと、次に考えられることとしては「興味は持っているんだけどめんどくさいし別に行かなくていいかな。」というニーズがない状態だと思います。

ではどうするか?

そこで重要なってくるのは会場に足を運ぶキッカケを大学サッカー側が作ることです。簡単に言えば思わず「観に行きたい!」と思ってもらえる広告出すとかです。ただ、その時に大切なのが「なぜわざわざ大学サッカーを観に行く必要があるのか?」という問いの答えを出してあげることで、会場に行った時に得ることができる価値をしっかり伝えることも重要だと思っています。

ではそのようなことを踏まえて具体的に考えていきたいと思います。

インパクトのある広告

【 】

「大学サッカーに興味はあるけどわざわざ行くのはめんどくさいな〜」そんなあと少しのところで足踏みしている人たちに対して、効果的だと思っている施策がインパクトのある広告を作ることです。インパクトのある広告というのは「えっ 欲しい!」、「なにそれ!」のようにお客さんの購買意欲といった欲を煽る広告のことです。

大学サッカーの理念とかそういうのをいったん置いておいて、ただただ集客に特化した極端な例を挙げると、大学の一般の学生をターゲットに「リーグ戦の試合を3人以上で観に来てくれた方々の中で、先着50組様にディズニーのペアチケットを2枚無料配布します!」といった広告を全面的に出してみるみたいなことですね。

この極端な例で言えばお客さんが大学サッカーを観に来た時に得られる価値はディズニーのペアチケットを入手できることだと思います。このように集客することが目的の告知であれば会場に足を運んだ時の得られるメリットを全面的に出したあげることが重要だと思います。しかし、お客さんによっては選手のサイン入り式紙が欲しい人もいれば選手と一緒にサッカーがしたい人もいるかもしれないですね。

そのためにもリサーチすることは重要だし、施策を仕掛けるごとにターゲットをしっかり明確にしてその人のニーズに合った告知をすることが重要だと思います。

ストーリー性を出す

【 】

あなたはヒットするドラマや漫画の主人公に共通しているものって何だと思いますか。それは感情曲線がデザインされているということです。感情曲線というのは「辛かったけどみんなといたら楽しくなってきた」みたいな感情の移り変わりのことですね。

お客さんというのは主人公に感情移入をして物語を追いかけるので、主人公の感情曲線をデザインすることはいわばお客さんの感情をコントロールすることに繋がります。そして、ヒットを生む作品の主人公の感情曲線にはちゃんと型があります。

最初は50点ぐらいからスタートして調子もよく右肩上がりで上がっていく。しかし、どこかでタイミングで逆境に遭遇し感情曲線がガクッと0点ぐらいまで下がってしまう。その時にに1人ぼっちになったり絶望する時間がある。「でも自分には夢や目的があって頑張らなきゃいけない」ということで0からの再スタートして紆余曲折しながらまた100点を目指す。つまり"N字型の感情曲線"を描いているということです。

ということでこれを現実にも落とし込みたいわけですが、高校サッカーはもろにそのストーリー性があると思います。基本的に高校サッカーでプレーしている多くの選手は選手権で優勝することを目標に、3年間情熱と時間を注いで日々練習に打ち込んでいるというイメージがあります。そもそもこれだけでもストーリー性がありますよね。

ただ、そのようなイメージを持っているのはたぶん私だけでなく多くの高校サッカーファンの方も同じ気持ちだと思っていて、そのイメージを植え付けさせているのが「最後のロッカールーム」だと思います。この動画を通して選手がこれまで苦労してきたこと、この大会にかける想いを可視化させることで多くの高校サッカーファンの心を動かしたのかなと思います。また、あとちょっとのところで優勝を逃してしまいめちゃくちゃ悔しい経験をした選手たちがいて、そのチームの先輩たちが「来年は頼むぞ!」と後輩に想いを託した映像が流れたら、たぶん来年の選手権でそのチームを応援する人が増えると思います。

一方、大学サッカーに置き換えてみてみると、たぶん選手一人一人が大学サッカーでプレーする目的がバラバラなために、大学サッカー全体としての「〇〇を目指す!!」というストーリー性が薄く、さらにそのイメージを多くの人に持たれているために「心から応援したい!」と思う人が少ないのかなと。

ではどうするかというと選手の内面を可視化させる部員ブログとかがあるわけですが、ただ、やっぱり文字よりは実際にその選手が喋っている映像の方が言葉に感情が乗るので視聴者の心を動かしやすいと思います。

ということで、ではどんな感じで作っていけばいいのか?という話をする上で素晴らしい動画があったので紹介したいと思います。またまたお世話になる順天堂大学蹴球部の投稿です。動画は記事の下のリンクからご覧ください。

こちらは僕の元チームメイトでもあるレノファ山口所属の浮田健誠選手が手掛けた動画らしいのですが、まさに感情のN字曲線を描き視聴者の心を動かす内容だったのではないでしょうか?このように各大学が集客をする時にこのようなストーリー性のある発信を増やしていくことが効果的だと思っています。

例えば法政大学の同期の選手の話をすると、その選手は1年時から徐々に右肩上がりで調子を上げ、12月頃に行われたとある大会でトップチームの選手として試合に出場し決勝ではゴールも決め大会MVPにも選ばれていました。ただ、「よし!ここから!」という時に実はその大会で怪我をしてしまったのです。その後、手術を重ね少しでも早く復帰することを目指してリハビリを頑張るも一向に良くならず。彼自身リハビリをやっている横で私たちが楽しそうにサッカーをしているところ姿を見て、「怪我しなかったらな...」と悔しい想いを抱えていたとは思いますが、ただそれを表に出さずチームの誰よりも明るく接し常に盛り上げてくれました。そんな彼が復帰したのは4年の後期から。およそ2年半ぶりですね。彼がこれまで復帰するために辛い想いを噛みしめながら頑張っていた過程を知っている私からすると、久しぶりにピッチを駆け抜ける彼の姿に熱くこみ上げるものがありました。本当に感動したしカッコよかったです。というような内容をブログでもいいのですが動画に収めて配信してみるととても効果的だと思います。

私は人は過程を知らないと心が動かないと思っていて、その選手と同じ時間を共有していた私からすると「あいつは本当に頑張ってたよな」というように感情移入できますが、敵からすれば「ただの相手選手の1人」ですし、試合を観にきた人の目線から考えても「試合に出ている法政の選手の1人」というぐらいにしか感じないと思います。キングカズこと三浦知良さんをなぜ多くの人が応援したくなるかと言ったらカズさんが今に至る過程をテレビなどを通して知っているからですよね。選手一人一人には絶対に物語があると思います。

ということでそんな1人の選手のストーリーを可視化させた動画を世に発信してみるのは、集客において1つ重要なのではないでしょうか。

試合を"イベント"として開催して足を運ぶ動機を増やす

【 】

4章の最初の方でも書きましたが、今の大学サッカーの現状で考えると全ての大会や試合で集客を考えるのは難しいと思っているので、ここでは1つの大会か試合にピックアップして集客をすることを想定した話になります。

そのことを踏まえた上でまた早慶戦を参考にして考えていきたいと思います。早慶クラシコではリーグ戦で行われる時と毎年夏に行われる定期戦の時では観客動員数に何倍もの差があるわけですが、 その差を生んでいる1つの要因として考えられることが、"イベント"として開催しているかどうかだと思っています。2018年度に行われた早慶クラシコでは試合前の会場周辺で「クラシコパーク」と呼ばれるイベントが開催されたそうです。

内容としては
・社会問題やアートといった分野で活躍する学生によるブース出展
・早慶の人気パフォーマーンス団体やストリートパフォーマーによるパフォーマンス
・地域の少年少女を対象にサッカー教室を開催
というような企画に取り組んだそうです。

また、このイベントを企画する目的を明確にしていて、「部内の人間だけが関わる閉鎖的な体制を打破すべく、一般学生、地域住民を巻き込むことで早慶クラシコをより開かれたイベントへ昇華させる」大学サッカーにおいては少しレベルが違うような気がします。

ではなぜ試合をイベントとして開催した方がいいのでしょうか?理由としてはイベント化することで会場に足を運ぶ動機を増やしてあげることです。第2章の駅伝についての話で少し触れさせてもらいましたが、観にくる動機を増やすことでキングコング西野さんの言葉を借りると1日をコーディネートしやすくなるわけです。

早慶戦の試合を観戦するという1つだけの動機だと「まぁ興味はあるけどわざわざ試合を見るためだけに足を運ぶのはまだいいかな」というようにめんどくささが勝ってしまう可能性が高くなると思います。しかし、クラシコパークのようなイベントを開催することで「イベント楽しそう!そのついでに早慶戦も観てみようか!」というような行く動機が増えたことで"〇〇のついでに観にいこう!"という現象が生まれるかもしれません。

これは普段のリーグ戦にも応用できることだと思っていて、関東大学リーグの試合会場は都心から外れている地方の会場が多いのですが、正直、コアなファンの方以外は行くことに躊躇するのではないかと思います。だからこそ会場に足を運ぶ動機を増やしてあげることが重要で、それこそ試合会場のスタジアムをイベント会場にしてそこに滞留して時間を過ごせるだけの空間を作ったり、試合の前後の時間で会場周辺で楽しめる観光名所を大学サッカー側がピックアップして その情報をSNSで発信してあげることが大事だと思っています。

それこそ「日帰り大学サッカー観戦ツアー!」みたいなタイトルで、「まずはあそこに行って、次はここでご飯を食べてそして大学サッカーの試合を見てそれが終わったらここの温泉に寄ってリラックスしましょう!」というように1日をコーディネートした投稿をするとお客さんは会場に足を運びやすいかもしれないですね。それにイベントとして開催することでお客さん側も「めちゃめちゃ楽しかった!!」と主体的に口コミがしやすくなると思います。

また、このイベントとして試合を開催している1番いい例はアメリカフットボールの最高の大会である"スーパーボウル"だと思います。このスーパーボウルは年間で感謝祭に次いで2番目に食糧が多く消費されたり、200以上の国と地域でテレビ中継されてアメリカでは毎年テレビ番組で年間最高視聴率を記録するほど注目度も高く、もはやアメフトの試合というよりはお祭りみたいな感じです。そんなスーパーボウルは競技のクオリティーもさることながらハーフタイムショーもすごいんです。

ご存知の方も多いかもしれませんがこのハーフタイムショーでは世界的に有名な歌手によるパフォーマンスが行われます。有名なマイケル・ジャクソンさんもこのハーフタイムショーに出演しているわけですが、これだけ超有名な歌手が出ていたら仮にアメフトに興味がない人でもハーフタイムショーを見ることが動機で会場に足を運ぶ可能性があるということです。「アメフトにはそんなに興味がないんだよな。でもハーフタイムショーでMichael Jacksonが出演するんだよな。それは観に行きたいな!!とりあえず会場に行ってみるか!」ぐらいの感覚で最初はハーフタイムショーが楽しみで会場に足を運んだけどアメフトの試合が想像を超える面白くて、最初的にはアメフトのファンになり他の試合をも観戦しにいくようなリピーターになる可能性もあるかもしれません。

他に足を運ぶ動機を増やすなら、すでに大学サッカーに興味を持ってくれている人をターゲットに、「現役大学選抜vs大学サッカーOB選抜の試合を決勝戦の前座で開催します!」という広告を出してみるとか。それこそインカレの時に大会特別応援団としてお笑い芸人であるパンサー尾形貴弘さんやEXITさんにツイッターでの告知で協力してもらっていましたが、スケジュールを事前に調整して試合前のイベントとして会場でお笑いを披露してもらった方が効果的な気がします。

そうすることで会場に来てくれる動機を増やすことはもちろんですが、大学サッカーには興味はないけどお笑い好きな新たな層の獲得にも繋がるかもしれないと思っています。これは他の有名なプロサッカー選手や有名人に頼んでも一緒だと思っていて、例えば女優の石原さとみさんが「〇月〇日に大学サッカーの試合があります!ぜひ観に行ってあげてください!」という会場に足を運ぶことを呼びかける告知と、「〇月〇日に大学サッカーの試合があります!私も会場に足を運ぶのでぜひ一緒に応援しましょう!」という「一緒に応援しよう!」という告知では後者のほうが確実に足を運びたいと思う人が多いと思います。

つまり、仮に石原さとみさんが「大学サッカーを観にいきましょう!」という告知してくれれば多くの石原さとみファンの人がその動画を見てくれるかもしれませんが、あくまでもその人たちが興味を持っているのは大学サッカーではなく石原さとみさんという事実は変わらないので、大学サッカーに関する広告効果はそこまで期待できないと思います。だからこそ有名人に告知をお願いするというよりは試合時のイベントに参加してもらうように掛け合った方がいいのかなと。

このようにイベントとして開催して足を運ぶ動機をたくさん作った方がいいと思っているわけですが、もし大学サッカーで集客する理由といった根本にある理念などを気にせずに発言してもいいのであれば、はっきり言ってしまうと本気で大学サッカーの集客を考えるのであれば、会場に足を運んでもらう最初の動機は正直何でもいいと思ってます。まずはどんな理由でもいいから会場に足を運んでもらって、「〇〇目当てで来てみたけど意外と大学サッカーって面白いんだね!また観に行きたいな!」と興味を持ってもらい、結果的に大学サッカーのファンになってくれたらその取り組みは正解だと思います。

とにかく試合や試合会場を普段は味わえない"特別なもの"にして興味性を出すことが重要だと思っています。その"特別のもの"にする方法が試合をイベント化するのか、インパクトのある広告を出すのか、有名な人に出演してもらうのかなどそれは様々だと思いますが、少なからず今の大学サッカーのままではこの"特別さ"は足りないと思います。

昨年の天皇杯で行われた法政大の試合では普段の大学サッカーでは考えられないぐらい多くの方が足を運んでくれましたが、あの試合も普段では味わえない"特別なもの"があったからだと思います。それは 普段のリーグ戦では見ることができない大学生vsプロサッカー選手という構図。そして、ジャイアントキリングというドラマが見れるかもしれないというストーリー性があったからだと思います。

しかし、勘違いしてはいけないのはあの試合はあくまでも環境によって作り出された特別感だったということです。あの試合に人が集まった理由は認知・注目度の高い天皇杯だったからであり、対戦相手が東京ヴェルディやガンバ大阪だったからです。つまり何らかの特別さを出すために環境に任せるのはナンセンスで"特別なもの"を作るには自分たちで付加価値を付けなければいつまで経っても現状は変わらないということです。

そこでインパクトのある広告やイベントを開催するってことがいいという話をしてきたわけですが、個人的にいいなと思っているのが優勝セールです。個人的にそのイメージが強いのがプロ野球で福岡ソフトバンクホークスが優勝したらソフトバンクユーザーに色々特典がつくみたいなことですね。そうすることで仮に野球に興味がなくてもその人がソフトバンクユーザーであれば、ホークスが優勝することでセールというメリットがあるので勝敗を気にするかもしれません。

その優勝セールがキッカケで徐々に興味を持ち始めて少しずつ応援するようになり、最終的にはファンとして会場に足を運ぶようになってくれるかもしれません。ただこの優勝セールを行うのであれば自分たちのグッズのような既存のファンだけが喜ぶものと優勝セールの組み合わせよりも、ソフトバンクのようなユーザー数がすでに多いものと組み合わせた方が相性がいいと思っています。

つまりどういうことかというと例えば法政サッカー部を例にしてみると、「もし法政サッカー部が優勝したら法政のグッズが半額で買えるようになります!」という広告を出しても喜ぶのはすでに法政サッカー部のファンの方だけで、もっと言えばその人たちはすでにそのグッズを持っている可能性も高いと思います。あくまでもこの特典が優勝セールの中の1つの取り組みであればいいと思いますが、この既存のファンだけしか喜ばない取り組みだと多くの人が応援してくれるという構図にはならないと感じました。

ではどうするかというと、法政サッカー部はプーマさんにサポートして頂いているので、「法政大学が優勝したらプーマの商品が半額で買えるようになります!」というようにプーマのようなすでに多くユーザーがいるものを対象にセールをおこなった方が興味を持って応援してくれるかもしれません。

ただこのままでは認知・興味の話になってしまうのでこれを集客に落とし込むとなると、まず無料で参加できる法政サッカー部のファンクラブを作り、その際に「このファンクラブの会員様限定の企画で、もし法政サッカー部が優勝したらその日から2週間プーマの商品が全て半額で買えるようになります!」的な広告を大きく取り上げます。そうすることで多くのプーマユーザーが反応し、法政サッカー部のファンじゃない人もファンクラブに入り、日々ファンクラブの中で法政サッカー部の試合結果などを流し気にしてもらうようになり、ファンクラブを通して法大サッカー部に関わる回数が増え少しずつ興味を持ってもらうことができます。あとは優勝が決まる試合で「会場にてプーマさんの商品が2週間半額で買える引き換え券を配ります!是非会場にお越しください!」と言って会場に足を運ぶように促します。最終的には「プーマのチケットが欲しいっていう動機で会場に足を運んでいたけど、なんだかんだ試合も面白く気付いたら法政サッカー部のファンになってしまった」と思ってもらうことができると思います。

大学のレベルでこれが実現できるかどうかは分かりませんが施策としては面白いような気もしています。ということで付加価値を自分たちで新しく作るのか。見せ方を変えるのか。そんなことを常に考えていくことが重要になるかと思います。

会場に行かないといけない理由を作る

【 】

2019年度の全日本大学サッカー選手権(インカレ)で面白いなと感じた取り組みがありました。それは12月9日までで2020年Jクラブ加入内定選手のユニフォーム型ストラップを販売する施策の注文方法から受け取りまでの流れです。

具体的に説明していくと1回戦(12/11)~準決勝(12/19)までの間に、各会場にて注文用紙を記入し、引換券を受け取ります。そして、決勝当日(12/22)に引換券と代金を会場まで持っていき、プログラム販売所にてお品物と引き換えという流れです。つまりストラップをもらうには最低でも2回は試合会場に足を運ばなくてはいけないということですね。

また、12月9日時点で内定先発表済みの選手が64人でしたが、「ストラップをおひとり様3個まで」にしていたことで、その64人の中からどうしても3個に絞れない人は自分の知人を連れてこないと3つ以上のストラップはゲットできないので、お客さんが勝手に口コミをして人を連れてくる流れも作れていたのかなと思います。

その成果もあってか2019年度のインカレの観客動員数の中で一般のお客さんの数は1,849人だったそうです。この数字は2019年度の関東大学リーグの平均観客動員数465人の約4倍も多い数字になります。他にも要因はあるかもしれませんが、このように会場に足を運ばなくてはいけない状況を意図的に作りだすことは集客する上では重要な要素だと思います。

他に具体例を挙げるのであれば年間チケットを買ってもらうこともそうだと思います。「せっかく買ったならもったいないし試合観に行くか!」みたいな感じですね。

ただ大学サッカーにはちゃんとした年間チケットが無くて、関東大学リーグでは関東大学サッカーサポーターズクラブという大学サッカーの公式のファンクラブのプレミアム会員になるとシーズンパスの特典がありリーグ戦が全試合無料観れるようになります。ただこれはすでに大学サッカーのリピーターの方にむけた施策だと思うので、大学サッカーがある程度集客できるようになった頃に全面的にアピールする感じになりそうですね。ただ年間チケットではなくても手元にチケットがある状態を作れれば会場に足を運んでくれる可能性があると思います。例えばチケットをプレゼントしてしまうなど。

「インカレ決勝後に行われるプロ内定者のサイン会への参加方法は、インカレ決勝戦のチケットを誰かに1枚プレゼントすることです!」のように自分のメリットとなる特典をもらうにはチケットをプレゼントしなくてはいけない状況を生み出してしまうなど。

他にも足を運ばなきゃいけない状況を作る例を挙げると、子どもをターゲットにして付き添いで親が強制的に来ないといけない仕組みづくりなどがあげられると思います。定期的にエスコートキッズをおこなって付き添いでご両親にも来てもらったり、インカレ決勝前に 各大学のプロ内定者を中心にサッカー教室を開催してその後に親子で試合観戦もしてもらうとか。

あとは上記で「現役大学サッカー選抜vs大学サッカーOB選抜」みたいな試合を広告する話をしましたが、もしこれが本当に開催できるなら開催日をインカレ決勝後にして「インカレ決勝の会場にて◯日後に行われる現役大学サッカー選抜vs大学サッカーOB選抜の前売り券を販売します!」みたいなこともできると思います。

足を運ばなければいけない動機を色々考えていこうという話ですが、個人的にはこの「いかなけらばいけない」に近い状況をクラウドファンディングを使うことで作れるのかなと思っています。そもそもクラウドファンディング=お金を集めることというイメージがあると思いますが、重要なことはどれだけ資金を集められたかではなくてどれだけ支援者数を集められたかということなのです。

それがどういうことかというと、例えば私とあなたの2人で一緒懸命考えて何年もの時間を費やしある商品を作ったとします。そうするとその商品は最低でも2個は売れます。なぜなら私とあなたが買うからですね。つまり2人で作った商品が2つ売れるのであれば、1万人で作った商品は1万個売れる。ということですね。大事なのはどれだけ支援者数を集めることができるか。

では実際にこれを大学サッカーのインカレに絞って転用していきたいと思いますが、「購入型」のクラウドファンディングを上手く使うことが重要だと思っていて、これは支援した後に明確な"見返り"があるものです。

まず「全日本大学サッカー選手権を盛り上げよう!」というな企画を提示してクラウドファンディングをおこないます。見返りもなく支援する項目から様々なリターンを作ります。例えば50,000円でインカレのスポンサーとしての広告できる権利10,000円でインカレのポスターを制作できる権利。5,000円でカメラマンとしてピッチの近くで写真を撮れる権利1,000円でJリーグ内定者のサイン会に参加できる権利など。大事なのはこのように試合の作り手として参加できるリターンを多くすることです。

ではそうすることでどういう現象が生まれるのでしょうか?考えられることとしては、作り手として参加できる権利を買った人が仮に大学サッカーのファンではなくても、自分のパフォーマンスをするついでに試合観戦をしてくれる可能性があること。ただ、メリットはこれだけではないと思っていて、「今度、インカレ決勝の前後に開催されるイベントでパフォーマンスすることになったんだよ!ぜひ見に来てよ!」というような感じで大学サッカーと自分のことを友達や家族に口コミしてくれたり、SNS上でインカレについて発信してくれる可能性もあると思います。

そしてもう一つが、作り手に回すことで「俺もこのインカレを盛り上げる一部なんだ」というように帰属意識を持ってくれて拡散してくれる可能性があると思ったからです。

大学サッカーは「俺らのサッカーの能力すごいんだぜぇ!」というサッカーのクオリティー押し出すのではなく、「もっと大学サッカーを盛り上げるためにあなたも協力してくれませんか!?共により良い大学サッカーを作りましょう!!」のように多くの人を巻き込んで一緒に大学サッカーを作って一緒に楽しんでしまおうぐらいのスタンスもありなのかなと。

スポーツ業界でもそういう取り組みをしている団体があまりないと思いますのでじつげんできればとても面白いと思います。


ということで今回の話を終わりたいと思います。とても文章が長い中で最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

今回は集客の話をしましたが、人を集めたらそれでOKそう思っているのであれば大間違いです。あくまでもリピーターになってもらうまでが大事。そこまでやらないとこれまでの積み重ねの意味がありません。ではどうすれば魅力的なコンテンツで溢れる現代でリピーターになってもらうことができるのでしょうか?

次回はそんな話をしていきたいと思います。そして次回がこの長い長い記事のラストです。お楽しみに。

【著者プロフィール】

下澤悠太(シモザワ ユウタ)
■所属:ブラウブリッツ秋田
■背番号:10
■ポジション:MF
■1997年9月4日生まれ
■170cm/68kg
■経歴 FC PROUD-柏レイソルU-18-法政大学
■2019年に天皇杯で東京ヴェルディやガンバ大阪を破った法政大学より新加入のミッドフィルダー。クラブからの期待も高く背番号10番を背負い、攻撃陣を牽引する。
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著者プロフィール

「秋田の笑顔と元気のために」 ブラウブリッツ秋田に関するニュース・コラムなど、チーム広報が秋田の魅力を発信していきます。

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