マリーンズ広報のよもやま話 第20話 追い込み馬 編

千葉ロッテマリーンズ
チーム・協会

【千葉ロッテマリーンズ梶原 紀章広報メディア室長 撮影 加藤夏子】

 昔、メジロプライトという競走馬がいた。メジロ牧場の生産場で父がメジロライアンで母がレールデュタン。長距離馬でいつもスタートは最後方。そこからグイグイ上がっていって、最後の直線で追い込むというタイプのいわゆる追い込み馬だった。私はこの馬が大好きだった。最後尾から3コーナーあたりからグイグイと上がっていく姿が大好きだった。

 追い込み馬の宿命だが、逃げている馬にそのまま1着ゴールされることも多かった。ライバルとしてはサニーブライアンやサイレンススズカなどがいた。皐月賞でも日本ダービーでも凄い末脚を見せたがあと一歩届かなかった。もしゴールがもう少し先にあれば届いていたのではないかといつも思えてしまうレース続きだった。G1のタイトルは天皇賞春の1度。それでも大好きだった。なぜだろう。今思うと、その姿に自分をダブらせていたのだと思う。勉強も出来なかったし運動神経も良くなかった。いつも最後方の人生を歩んできたが、いつか一番後ろから先頭に立ってやるという想いがあり、それをメジロブライトの走る姿にダブらせていたのだと思う。いわゆる馬に感情移入をしていたのだ。

 すべてのスポーツ観戦において大事なファクターの一つにこの「感情移入」があると自分は思っている。もちろんプロ野球もそうだ。だから私はどれだけファンの皆様に感情移入をしてもらえる材料を情報として提供できるかを大切にしている。ただ漠然と打った、抑えた、点が入ったという試合を見てもらうのではなくてその選手がどんな選手でどんな努力をしてどんな悔しい想いをして今、このグラウンドに立っているのかを知ってもらう事で、時には自分の姿とダブらせて勇気をもらうこともあると考えている。スポーツで勇気をもらうという表現はよく使うが、まさに自分の置かれている境遇と重ねるからこそだと思う。あの選手もあんなに苦労して、今の成功がある。自分も今は会社で苦しい想いをしているけど、頑張ろうと勇気づけられるのだと思う。だからこそプロ野球広報には色々な業務があるけれども大きな役割の一つとして感情移入できる材料をどれだけ提供できるかというのがあるのだ。

 今年の千葉ロッテマリーンズは4位だった。昨年は5位。一昨年が6位だ。今は最後方がジワリジワリと上がっている最中だと思う。そして最後の直線でイッキに末脚を爆発させる。ライバルたちを抜き去り、先頭に立つ。来年はそんな年にしたいと願っている。

文・千葉ロッテマリーンズ広報メディア室 梶原 紀章(かじわら・のりあき)

 1976年8月18日生まれ、大阪府吹田市出身。東京都私立郁文館高校〜関西大学。99年に産経新聞社に入社後、サンケイスポーツ運動部に配属し、00年にオリックス担当、01年から04年まで阪神担当。05年に千葉ロッテマリーンズに入団し主に広報業務を担う。11年にはチケット営業を経験。現在は広報メディア室室長
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