マリーンズ広報のよもやま話 第10話

千葉ロッテマリーンズ
チーム・協会

【千葉ロッテマリーンズ梶原 紀章広報メディア室長 撮影 加藤夏子】

 私がプロ野球の世界の仕事に携わって一番、肌で感じたのは成功体験ではなく失敗体験から人は成長するということだ。これは記者時代の入社1年目、2年目に取材をさせていただいた当時オリックスのイチローさんがよく言っていたことでもある。誰もが認める世界のヒットマンでさえ打率は3割台。つまり6割を超える失敗があり、イチローさんはこの失敗した打席と向き合ってきた。なによりプロ入り1年目、2年目は一軍と二軍を行ったり来たりしながら悔しい想いを積み重ねている。悔しい体験、失敗した出来事が糧となり、またその時の悔しさをエネルギーに変えて今日まで上り詰めた代表的な人だ。阪神タイガースを取材させていただいた3年目から6年目もよく現監督の矢野輝弘捕手が「あまり勝った試合のことは覚えていないなあ。むしろ大逆転負けとかサヨナラ負けした試合のこと、悔しい事は鮮明に覚えている」と話をしていた。成功者の誰もが失敗を繰り返し悔しさを胸に一流の座に上り詰めてきた。

 だから自分も失敗体験を大事にしているし、悔しい事、辛い事と出会った時は自分が成長できるチャンスだと思うようにしている。この悔しさをエネルギーに変え、仕事で頑張ろうと思う。失敗としっかりと向き合い失敗をした事実を認め、なぜ失敗したのか、どのようにすれば上手くいったのかを考える。そうすれば必ず次には生きる。失敗を恐れ、周囲に隠し生きることだけは絶対にしないと心に誓っている。

 そういう意味で若い方々には失敗としっかりと向き合える人間になって欲しい。どうも失敗をすることで周囲の目や自分の評価、上司から怒られることなど体裁を気にして受け身になっているように見える人が多い。20代の頃は失敗して当たり前。もしろその当たり前の年頃にどんどん失敗をして経験値を上げるべきだ。もちろんケアレスミス的な失敗は避けるべきだが、挑戦を恐れては絶対にいいものは生み出せない。そもそも誰がやっても成功するようなものは元々たいしたことではない。みんな失敗を恐れるような難しい業務の先に大成功はあると思う。

 そういう自分もこの境地に達したのは最近で若い頃、先輩方に「失敗を恐れるな」と何度も言われたけどピンとは来なかった。年輪を重ねて白髪が出るようになってからようやく理解した。でも、だからこそ自分は伝え続けたい。色々な媒体で書かせていただいているコラムでも失敗が成功に繋がったというようなエピソードが数多く登場するのはそういう想いからでもある。私もこれからどんどん失敗を繰り返す。おっさんのくせに失敗を繰り返しながらも立ち上がるダサい背中を若い子たちに見てもらいたいと思っている。

文・千葉ロッテマリーンズ広報メディア室 梶原 紀章(かじわら・のりあき)

 1976年8月18日生まれ、大阪府吹田市出身。東京都私立郁文館高校〜関西大学。99年に産経新聞社に入社後、サンケイスポーツ運動部に配属し、00年にオリックス担当、01年から04年まで阪神担当。05年に千葉ロッテマリーンズに入団し主に広報業務を担う。11年にはチケット営業も経験。現在は広報メディア室室長
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著者プロフィール

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