高校野球ユニ&道具の細かい規程 根底には記者も縛られている感覚も…
中村 許可制なのも「華美だから」という理由なんです。サングラスは「カッコつけるもの」という認識なのだと思います。これも、高校野球の印象を守るための、ある種の印象操作なのかなと勘繰ってしまうことがあります。サングラスをかけていると、年配の指導者の中には「相手に失礼だ」とか「チャラチャラしてるんじゃねえよ」という方がいますからね。
松坂 中学時代の同級生で、すごく運動能力が高くて、うまい内野手がいたんです。教わってもいないのにワンハンドキャッチとかジャンピングスローなんかも華麗にこなすんですよ。でも……。
中村 「カッコつけんじゃねえよ!」って言われますよね。
松坂 そうなんです。それで結局、指導者からは評価されなくて。もったいないなと思いました。サッカーだと「今のパス、オシャレだね」みたいな言い方をよくするじゃないですか。でも、野球では聞いたことがありませんよね。
中村 今度、記事中で使ってみましょうか。「星稜のショート・吉田は右よりのゴロをたくみにさばき、そのまま二塁にオシャレなグラブトスを決めた」と。
松坂 いいじゃないですか。何となく伝わってきます。
中村 絶対、編集者から質問されますよ。「オシャレなトスってなんですか?」って。
松坂 確かに、表現がやや浮いてしまいますね……。
中村 2023年夏、慶應が優勝し、スローガンである「エンジョイベースボール」という言葉が脚光を浴びたじゃないですか。でも、野球関係者の中には、おもしろくないと感じていただろう人がけっこういたんです。「うちはエンジョイじゃないんで」という険のある言い方を何度となく聞きましたから。でも2005年冬、高校サッカー選手権を制覇し一大センセーショナルを巻き起こした野洲高校はメディアからどんな風に呼ばれていたと思いますか? 「セクシーフットボール」ですよ。
松坂 マスコミが付けたのですか?
中村 野球記者にはない感覚です。
松坂 それにしても大胆ですよね。高校野球の世界で記者が「セクシーベースボール」とか書けるのでしょうか。
中村 想像がつかないですよね。そういう意味ではわれわれも縛られているのかもしれません。
書籍紹介
【(c)KADOKAWA】
甲子園から「丸刈り」が消える日――
なぜ髪型を統一するのか
なぜ体罰はなくならないのか
なぜ自分の意見を言えないのか
そのキーワードは「人権」だった
人権の世紀と言われる今、どこまでが許され、どこまでが許されないのか
高校野球で多くのヒット作を持つ中村計氏が、元球児の弁護士に聞いた
日本人に愛される「高校野球」から日本人が苦手な「人権」を考える
知的エンターテインメント