有明アリーナを沸かせる柳田将洋のバックアタック 未来に向けて「限られた時間でも結果を」

田中夕子

バレーボールを盛り上げ、より発展させるために

10月11日に開幕したSVリーグ。今後のさらなる盛り上がりに期待がかかる 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 10月11日に開幕したSVリーグ。サントリーとVC長野は6試合、グレートベアーズを含めた8チームは8試合を終えた。まだまだ序盤で、さまざまな選手がコートに立ち、チームを構築していく段階ではある。

 だがSVリーグになり外国籍選手の枠が1から2に増え、各チーム、オポジットやアウトサイドヒッターなど得点源、攻守の要となるポジションに配置することが多い。グレートベアーズも例外ではなく、オポジットにはムザイ、アウトサイドヒッターにはフェレイラが入り、対角には後藤や亀山が起用されることが多く、柳田はリリーフで投入される。

 その現状を、柳田自身はどう捉えているのか。

「チームの形である速いバレーに対してフィットする。僕ができていないというよりも、彼らのほうがフィットしているし、僕もそう思います。自分がコートに立つためには、自分がその速さや求められるバレーにどれだけうまくアジャストメントできるか、というところだと思うし、それができればプレー時間も増えると信じて集中する。もちろんどんな状況でもチームのため、チームをヘルプするという気持ちは持ち続けていますが、1人の選手として見ればワンチャンスをものにしないと評価は上がらないし、自分の評価を上げないとスタートにも立てない。若い選手がどんどん力をつけてきているので、彼らに対抗するためにも、限られた時間でも結果を出すことが、今の自分に求められることだと思ってプレーしています」

 過去ではなく、未来へ向けて。昨シーズン、地元・東京のグレートベアーズに移籍して以後、コート上ではもちろんだが、コートを離れてもバレーボールを盛り上げ、より発展させるためにさまざまなチャレンジを続けてきた。

 今夏のパリ五輪でも、現役選手としての目線や経験を活かし、さまざまなテレビ番組や新聞、WEB媒体で解説も担い、同じ目線で悔しがり、喜ぶ。等身大の姿で日本代表を応援しながら、1人の選手として新たに始まるSVリーグに向けた準備も重ねてきた。

 限られた出場機会でも、着実に、かつ強い印象を残す。

 有明アリーナでのバックアタックも、連日の1万人を超える観衆も、柳田個人のこれまでの歩みや重ね続けてきた努力の成果であり、集客にこだわり、「満員の観客の中で面白いバレーボールを魅せる」ことにこだわってきた、東京グレートベアーズというクラブの成果でもある。

 柳田が言った。

「グレートベアーズとしての取り組みも含め、全く何もつながりがなく今この瞬間があるというわけではない。だからこそ今度は、今シーズン中に僕らがどんな形で実現するのか。グレートベアーズとして掲げるのはシーズントータルで(観客)10万人、その目標を目指し続けて、実現していくことにもつながっていくと思います」

 まだまだ、シーズンは始まったばかり。きっともっとこれからも、会場を沸かせるシーンは何度も何度も訪れるはずだ。これまでと同じように、特別な1本をいくつも積み重ねるべく、柳田将洋が歩みを止めることはない。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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