「スイープの迫力違う」「ブラシの音もはっきり」 TM軽井沢の両角友佑&公佑・兄弟インタビュー

奥岡幹浩

年齢を重ねたことで生じた変化とは

ブラシを手に先を見つめる両角公佑 【Photo by Matt Roberts/Getty Images】

――お2人が所属する、TM軽井沢というチームの特徴は。

友佑 1番の特徴は…おじさんだな、というところですかね(笑)。若いと思っていた宿谷君も、気づけば20代後半。他の国内チームだとベテランと若手が融合するチームが増えているなかで、僕たちはベテランと中堅、みたいな。そういう意味では、経験量は比較的多い。戦い方の柔軟性、引き出しの多さは、特徴の1つですかね。

公佑 戦術面でいえば、ハウス内に石がたくさんたまることが特徴。ストーンが1投ずつ繊細に積み上がっていき、いつの間にか相手はTM軽井沢の作戦に引きずり込まれている……という場面は、今季のカナダ遠征中に何度もあります。繊細なショットで、コツコツと自分たちのペースに持ち込んでいく。気づいたらTM軽井沢が非常に有利な形になっている。そういったあたりを楽しんでいただけたら嬉しいですね。

――見る方としては「気づいたら有利に」であっても、選手たちは何手も先を読みながら、優利な形を築き上げているわけなんですか。

公佑 僕はそう思いながらリザーブ席で見ていますが、どうなんでしょう(笑)。

友佑 そのつもりでいますが、気づいたらめちゃくちゃ不利になっているときもあります(笑)。ちょっとミスしただけで大変なことになりかねない諸刃の剣のような側面も。ピンチを迎えたら、それだけリスクをとった反動だと思ってください(笑)。

――経験豊富な選手がそろうチームとの話も出ましたが、年齢を重ね、選手として変化してきたことは。

友佑 若いころは「経験なんて」と思っていたんですが、結局のところ「経験は大事だ」と考えが変わってきました。そこが最大の変化ですね(笑)。アイスの読みやコミュニケーション、試合の局面に応じた作戦の選択など、状況に応じて最善の方法が異なる。その際に、何をもとに読み解いていくかといえば、やっぱり経験かなと。

公佑 僕の場合は、以前はミスショットをしたさい、自分自身に対して怒ってしまうことがよくありました。でも年齢を重ねたことで「まあ、これが今の実力だよな」と、いい意味で諦められるようになってきた。その分、波も減ってきたかなと感じています。

男子も継続的に五輪出場することが大事

2018年平昌五輪に出場した両角友佑(中央)と公佑(左)の兄弟 【写真は共同】

――日本代表や五輪への思いについては

友佑 やっぱりオリンピックに出ないと、なかなか盛り上がりは来ない。そういう意味では、日本の男子は五輪出場回数が少なすぎる。長野オリンピックで正式種目になってから、女子は全大会出ている一方で、男子の出場は2大会だけ。やっぱりその差は非常に大きい。日本におけるカーリング文化や強さを底上げし、まずは男子も4年に1回、日本代表として継続して出場する環境にならないといけない。

――平昌五輪で得たことは。

友佑 試合そのものは、オリンピックも世界選手権もそれほど変わらない。普段と違うところは、選手村に他競技の選手がいることぐらい。カーリングという競技自体でいえば、それほど特別な変化はないんです。それでも終わってみて一番感じたのは注目度の高さ。好結果を残した世界選手権よりも、グループリーグで敗退したオリンピックのほうが圧倒的に上。先ほどの繰り返しになりますが、だからこそオリンピックにコンスタントに出ることは、競技のためにもすごく大事。自分たちが出られたら最高だけど、そうじゃなくても、とにかく日本として男子から1チーム出場することが大事と思います。

公佑 僕は、オリンピックは本当に特別な舞台だと感じた人間です。会場にたくさんの方が応援にきてくださる。1試合ごとの疲労も、普段の大会とはまったく違った。そして他競技のある選手から「1度目の出場ではなかなか力を出しきれない。2回出ればもっと戦えるようになる」と言われたし、それは確実に感じた。再び出場して、平昌でやり残した分までやり切りたい気持ちは強いです。

――最後に、軽井沢国際カーリングへの抱負と今季の目標を。

友佑 まず今シーズンに関しては、グランドスラムに出場できるツアーランキング16位以内に入りたい。そのためには1つでも多くの大会で決勝トーナメントに残り、最終日まで出場することが大事。軽井沢国際もツアー大会の1つで、これだけいいチームが集まれば、好成績を残すと多くのポイントを獲得できる。また地元開催の大会で勝つ姿を見せることは、地元選手としてできる恩返し。その意味でも優勝する気持ちで臨みたいです。

公佑 僕も同じ思いです。地元で1試合でも多く見ていただくためにも決勝まで行きたいし、優勝したい。それで観客の皆さんが盛り上がってくれたら最高です。今シーズンの目標は世界ランキング16位以内と、そして日本選手権初優勝。五輪切符を懸けた戦いに向けて弾みをつけたいですね。

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著者プロフィール

1975年三重県生まれ、日大芸術学部卒。大学在学中からフリーライターとして約15年間活動したのち、総合週刊誌「サンデー毎日」(毎日新聞社)契約記者に。その後、時事通信社でプロ野球などを取材。19年秋に日刊スポーツ新聞社へ移り、五輪競技などを担当する。プロフィール画像は21年6月、当時幼稚園年長の一人娘が手がける

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