マルクス・レーム、走り幅跳びでパラ4連覇 未開の9m超えの可能性を山本篤が解説

C-NAPS編集部

銀メダルのロシデントら台頭する若手にも注目

アメフトにルーツがあるロシデント(写真右)が7メートル76の跳躍で見事に銀メダルを獲得した 【写真は共同】

 レーム選手がモチベーションを維持する上では、「絶対に負けたくない」と思わせるライバルがいることも重要ですね。将来的にライバルになる可能性を示してくれたのが、2位のロシデント選手です。まだまだ競技歴が浅い中で、パラリンピックでレーム選手に次ぐ2位になれたのは、ものすごい能力の持ち主だと証明しています。

 彼はもともとアメリカンフットボールの選手だったと聞いて、「だからいろんなことができるのか」と納得しました。大学レベルでアメフトをしていたようなので、身体能力が高いことは想像できました。走り幅跳びで一番難しいのは踏切のタイミングを合わせることですが、ロシデント選手は競技歴が短い中でうまく適応しています。身体能力に加えて、義足のたわみを活かした跳躍も早い段階でマスターした器用な選手なのだと思います。本当に期待のホープですね。

 これから1年くらいで8メートル中盤くらいの記録を出すまでに成長できれば、本格的にレーム選手のライバルになれるかもしれません。2026年のロサンゼルス五輪は、レーム選手が現役を続けていたら40歳で、ロシデント選手が30歳なので、その時には2人がライバル関係になってしのぎを削る展開になることを期待しています。

引退後のキャリアでも常に挑戦し続ける道に

陸上選手を引退した後も挑戦し続ける姿勢を貫く山本さん。指導者とゴルファーという2つの道を歩んでいく意向だ 【写真は共同】

 陸上選手としては引退することになりましたが、今後の人生においてやりたいことが2つあります。1つは指導者として、選手をメダリストに育てることです。現在、2名の選手を指導しているので、彼らが成長して、コーチとしてパラリンピックのような大きな舞台に戻ってくることを夢見ています。また、将来的には海外の選手も指導したいと思っています。海外のコーチに教わる日本人はたくさんいますが、日本人コーチに教わる海外選手の事例はまだまだ少ないですよね。自分が1つのモデルケースになれたらと思うので、まずはもっと英語力を高めないといけないですね。

 もう1つはゴルフです。自分はずっとプレーヤーであり続けたいので、年齢を重ねても伸びしろがあるゴルフは最適な競技だと思っています。単純に自分がもっとうまくなれる、向上できる可能性があると楽しいですよね。陸上をやめた理由としては、「自己ベストを更新できるのか」を考えた際に、自分でその可能性に蓋をしてしまったからです。そうなった際に、また可能性の蓋を開けることはすごく難しいですよね。だったら、まだまだ伸びしろがある別のことにチャレンジをしたいと思い、それがゴルフでした。今後は日本チャンピオンを目指して、日々成長していきたいです。

 パリパラリンピックではテレビ解説のお話もいただき、レーム選手の試合の解説も担当しました。選手目線の気持ちの部分を視聴者の方に伝えることを意識しましたし、新たな視点で競技を観ることができたと思います。今後も常に向上心を持って、「まだまだ自分はやれる」と思ったことに挑戦し続ける人生でありたいですね。

山本篤(やまもと・あつし)

【本人提供】

高校2年時にバイク事故により左足大腿部を切断。義肢装具士になるための専門学校で競技用義足と出会い、陸上競技を始めた。その後は、「ブレードアスリート」として日本パラスポーツ界の第一人者として君臨した。夏季パラリンピックには主に走り幅跳びの種目で、2008年の北京から4大会連続出場。2021年の東京パラリンピックでは自己ベストの6m75をマークした。2024年5月に陸上選手としての現役引退を発表。今後は後世を育成する指導者としての道と、ゴルフでの新たな挑戦に邁進する。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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