週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#22】富士大が誇る三拍子そろったスラッガー麦谷祐介、高校時代から注目の左腕・佐藤柳之介

西尾典文

「数字以上のボールの速さと緩急!東北を代表する左腕」

緩急をつけたピッチングで打者をほんろうできるところが長所の富士大・佐藤 【写真提供:西尾典文】

佐藤柳之介(富士大 4年 投手 179cm/88kg 左投/左打)

【将来像】伊藤将司(阪神)

ボールが見づらいフォームと数字以上に勢いのあるストレートは伊藤と重なる

【指名オススメ球団】ロッテ
小島に次ぐ日本人の先発候補となる左腕を補強したい

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 富士大は投手にも有力選手が多いが、その中でも最も注目度が高い存在と言えるのがサウスポーの佐藤柳之介だ。東陵高校では全国的にはそれほど名前の知られた存在ではなかったが、下級生の頃から主戦として活躍しており、3年夏に行われた宮城県独自大会では東北高校を完封するなどチームの準決勝進出に大きく貢献した。富士大でも1年春のリーグ戦からいきなり2勝をマーク。続く大学選手権の岐阜聖徳大戦では先発を任されて、1回途中で早々に降板という悔しい全国デビューとなったが、当時から鋭い腕の振りは目立つものがあった。

 1年秋以降は故障でしばらく投げられないシーズンが続いたが、その期間にフィジカル面を強化。179cm、88kgというプロフィールの数字を見ても分かるように、1年生の頃と比べると上半身も下半身も見違えるほど大きくなった印象を受ける。そして大きく評価を上げたのが麦谷と同じく昨年の全国大会での活躍だ。大学選手権では大阪商業大を相手に先発して5回を無失点で全国初勝利をあげると、続く創価大戦ではロングリリーフで6回を投げてまたも無失点の好投。明治神宮大会では初戦の上武大戦で被安打3、8奪三振で見事完封勝利もマークした。地方大学の投手の場合、リーグ戦での成績が良くても相手のレベルが高くないということで低く評価されることも多いが、全国大会常連の大阪商業大、創価大、上武大を相手に完璧なピッチングを見せたのは高い実力がある証拠と言えるだろう。

 春は少し不安定な投球もあってチームもリーグ優勝を逃したが、秋季リーグの開幕戦となった8月17日の青森中央学院大戦では9回を1人で投げ抜き、被安打4、9奪三振、自責点1で2失点完投勝利とさすがのピッチングを見せた。立ち上がりは少しストレートが高く浮く場面もあったが、中盤以降は見事に修正。特に圧巻だったのが6回以降のピッチングだ。9回に味方のエラーで失点を許したものの、それ以外は1人の走者も許さず、この4イングだけで5連続を含む6奪三振を記録。それも全て空振りで奪ったものだったというところに佐藤の良さがよく表れている。この日の最速は146キロで、アベレージは143キロ程度とそこまでスピードガンの数字が速いわけではないが、それでもストレートで空振りを奪うことができるのだ。その要因としてはフォームとボールの質が大きいのではないだろうか。テイクバックで早めに肘をたたみ、右肩の開きもギリギリまで我慢しているため、打者からするといきなりボールが出てくるように見える。それでいながら縦に腕が振れており、指のかかりもよく、数字以上に打者の手元でボールの勢いが感じられるのだ。110キロ弱の大きなカーブも上手く操り、打者の目線を変えられるというのも大きな武器である。

 翌週の青森大との試合は点差が開いたため5回で降板となったが、被安打3、6奪三振で無失点と2週続けて見事な投球を見せている。今年の大学生左腕は金丸夢斗(関西大)が圧倒的な目玉となっているが、それに続く選手はそれほど多くない。貴重な左腕で先発として試合を作る能力は高いだけに、指名を検討する球団も多くなりそうだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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