週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#22】富士大が誇る三拍子そろったスラッガー麦谷祐介、高校時代から注目の左腕・佐藤柳之介

西尾典文
 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 9月に入り、大学野球の秋季リーグ戦も各地で開幕。大学生のドラフト候補にとっては最後のアピールとなりますが、今回は7人がプロ志望と言われている富士大から特に注目度の高い2人を紹介します。
(企画編集:Timely!編集部)

*現時点のレベルバロメーター:★の数
★★★★★ 5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆ 4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆ 3:上位指名(2位以上)の可能性あり
★★☆☆☆ 2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆ 1:育成であれば指名濃厚

「ドラ1投手2人から衝撃の一発。大学球界屈指の総合力を誇る外野手」

富士大・麦谷はチャンスでの集中力が高く、ここ一番ではしっかりミートに徹することができる 【写真提供:西尾典文】

麦谷祐介(富士大 4年 外野手 180cm/83kg 右投/左打)

【将来像】福留孝介(元中日など)

広角に打ち分ける上手さと長打力を備え、足と肩のレベルが高い点もイメージが近い

【指名オススメ球団】ヤクルト
センター、ライトが固定できず、外野の世代交代が必要なチーム事情から

【現時点のドラフト評価】★★★☆☆
上位指名(2位以上)の可能性あり

 今年の大学生外野手は西川史礁(青山学院大)と渡部聖弥(大阪商業大)が1位候補と見られているが、この2人に続く存在となりそうなのが麦谷だ。初めてプレーを見たのは大崎中央3年夏。宮城県独自大会初戦の対松島戦。チームメイトでエースだった氏家蓮(現・神奈川フューチャードリームス)がお目当てだったが、センターを守る麦谷のスピードが目立ち、12.00秒を切れば俊足と言われるスリーベースの三塁到達タイムでは11.16秒をマークしている。しかし体つきはまだまだ細く、非力で打撃の確実性には乏しい印象だった。

 富士大進学後は1年春からレギュラーに定着したが、下級生の頃はシーズンごとの調子の波が大きく、安定した成績を残していない。そんな麦谷の評価が大きく上がることになったのが昨年の全国大会での活躍だ。春、秋とも優勝した青山学院大に敗れたものの、春は下村海翔(現・阪神)、秋は常廣羽也斗(現・広島)と、ともにドラフト1位指名された投手からホームランを放って見せたのだ。しかも2本のホームランはいずれもレフト方向へのものであり、高校時代に感じた非力さは全くなくなっていた。

 今年春はリーグ優勝を逃したため見る機会がなく、8月17日、18日に行われた青森中央学院大との試合に足を運んだ。2試合とも麦谷は2番、センターで出場。17日の試合では1点を追う7回にレフト前への同点タイムリーを放つと、9回にも満塁の走者一掃となるタイムリーツーベースを放ち2安打4打点。18日も5回に先制のタイムリーツーベースで決勝点をたたき出す活躍を見せた。開幕週ということもあって少し力む場面もあったが、打撃で素晴らしいのがチャンスでの集中力だ。特に17日の試合は1点を先制されて6回までチームは無得点という重苦しい展開で、まさに値千金と呼べる同点打だった。長打力も申し分ないが、ここ一番ではしっかりミートに徹することができるのは持ち味である。また18日の試合でのタイムリーツーベースはセンター前への当たりで、普通の打者ならシングルヒットのところを一気に加速して二塁を落として入れている。二塁到達タイムは8.00秒を切ればかなりの俊足と言われるが、このときの麦谷のタイムは7.61秒という圧巻の数字だった。

 25日の青森大との試合ではライトへのホームランも放っており、最終シーズンでのアピールは続いている。外野手としての総合力の高さは抜群だけに、外野が手薄な球団は上位での指名を検討する可能性も高そうだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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