頂を目指す車いすラグビー日本代表 “全員出場”の初戦から見る日本の強みとは
唯一の“新顔”である草場龍治もパラリンピックデビュー
選手層の厚さが現代表の大きな強みになっている 【写真は共同】
「多くの海外チームは1番のラインアップ、2番のラインアップがあって、その他のラインアップになってくると戦力的に下がる場合がある。ところが日本は、さまざまなラインアップを出しても、決して劣ることのない強さで、(相手に)プレッシャーをかけることができるチーム」
この日のドイツ戦でも、ラインアップを入れ替えることでリズムを作ったり、修正を図ったりと、試合を有利に展開していった。初日に行われた4試合で、全選手が出場したチームは日本だけということからも、このチームの強みが分かるだろう。
そんな12人の日本代表、実は11人は東京大会を経験している。唯一の“新顔”である草場龍治は、ドイツ戦にスタートから出場して、パラリンピックデビューを果たした。
少し朴訥としたタイプの草場は「初のパラリンピックという舞台で、自分のプレーがどれだけできるかというのは正直不安だったんですけど、これまでの練習や大会で経験したものを思い出して、自分のプレーに集中できた」と振り返りつつ、次戦に向けて「スピードを持ち味としているので、もっと自分より持ち点の高い選手に強い気持ちで向かっていって、もっとチームにアドバンテージを作れるようなプレーをしていきたい」と淡々とした様子で話した。
そんな草場について池は「自信持って、素晴らしい選手なので、この大会でもっと爆発してほしい、暴れてほしい」と期待を込めた。
まだ見ぬ頂点を目指して
池はアメリカとカナダの試合を確認し、「いいところも悪いところも、アメリカの強さも弱さもしっかり見えた」と分析した上で、明日に向けて「とにかくディフェンスが通用するかというのが鍵になってくるので、どんなふうに日本のディフェンスを打開しにくるかを見た上で、ポジショニングを変えたり、タイミング変えたりしてアメリカを止めたい」と意気込んだ。
“金メダル候補”と言われながら、過去2大会は準決勝の壁に阻まれてきた。岸HCは大会前、具体的な目標は口にせず「山頂を目指す上で、一歩一歩足を出してしっかり登っていく。全員で登っていけば、きっといい結果に結びつくんじゃないかなと。そういったところにみんなで立てればいいと思っています」と語っていた。
池も試合後、頂点への思いを口にしながらも「金メダルを取る。そこだけに集中しすぎると、いいプレーにつながらないこともやっぱりあるので、金メダルを取ることを願うのではなく、適切なプレーをしながら、相手との点差をどんどん広げていって、相手の心を折っていく。そういうことができれば勝利、しっかりとした勝利がもぎ取れると感じています」と話した。
パラリンピックの頂に向け、一歩目を踏み出した車いすラグビー日本代表。5日間の競技を終えた後、彼らはどんな景色を見ているのだろうか。
(取材・文:山田遼/スポーツナビ)