【週刊ドラフトレポート#20】甲子園決勝決めた148キロ右腕、関東第一・坂井遼 宮崎商の大型遊撃手・中村奈一輝は大舞台で成長
「甲子園で成長した姿を披露!九州を代表する大型ショート」
ショートの守備で成長を見せた宮崎商・中村 【写真提供:西尾典文】
【将来像】二岡智宏(元巨人、日本ハム)
大型で身のこなしが軽く、強肩とリストの強さも二岡と重なる
【指名オススメ球団】ソフトバンク
今宮健太の後釜候補の1人としてスケールの大きいショートを加えたい
【現時点のドラフト評価】★☆☆☆☆
育成であれば指名濃厚
今年の高校生は地方大会で敗れた選手も含めて、投手に比べると野手は少し人材が少ないという印象を受けるが、そんな中でも甲子園で評価を上げたと思われる数少ない選手の1人が宮崎商のショート、中村だ。ちなみに名前の奈一輝はスポーツメーカーの『ナイキ』からつけられたという。宮崎県内では中学時代から評判の選手で、宮崎商でも入学直後からショートのレギュラーに定着。1年秋、3年春と九州大会にも出場している。
初めて実際にそのプレーを見たのは5月に行われた佐伯鶴城との練習試合だ。相手のエース、狩生聖真は以前このコラムで取り上げた九州でも屈指の投手ということもあって、多くのスカウトが視察に訪れていた。この試合で中村は2安打を放ち、リリーフとして登板すれば最速145キロをマークするなど活躍。しかしバッティングは踏み出した左足がかなりサード寄りのいわゆる“アウトステップ”傾向が強く、腰が引けるようなスイングになるケースが多いのが非常に気になった。また守備でも肩の強さは際立っていたものの、全体的に雑なプレーが多く、エラーも記録している。視察したスカウト陣と話しても概ね同じような感想が聞こえてきた。
しかし迎えた夏の甲子園、チームは初戦で中京大中京に逆転負けを喫したが、中村は春から大きく成長した姿を見せる。まず大きなアピールとなったのがショートの守備だ。1回裏の先頭打者の打球は弱い当たりのゴロとなったが、それに対して素早い反応で前進し、ランニングスローでアウトにして見せたのだ。さらに4回のノーアウト一塁の場面では、ピッチャーが弾いた打球をすかさずバックアップして対応。どちらも並みのショートだったら内野安打になっていた可能性は高いだろう。5月に見たときと比べても細かいステップワークが明らかに素早くなり、捕球から送球の流れもスムーズさが増したことは間違いない。先週取り上げた岸本佑也(奈良大付)のときにも触れたが、肩の強い選手は足の動きが疎かになることも多く、中村も春まではその傾向が見られていたものの、この夏は明らかに改善したのが大きなプラスである。
またバッティングも5月に気になったアウトステップが見られなくなり、しっかりと真っすぐ踏み出すことができるようになっていた。ヒットは7回の第4打席のレフト前ヒット1本で、試合終盤にはセンターへのフライを追いかけて脚がつり、最終打席はその影響で完全に手だけのスイングになっていたのは残念だったが、それでもわずか3カ月程度で大きく成長を遂げたことは間違いない。
プロフィールの183cm、70kgという数字を見ても分かるようにまだまだ細く、プレーの力強さなどは物足りないものの、スケールの大きさは今年の高校生ショートの中でも上位である。しっかり体を鍛えて上背に見合った筋力がついてくれば、一気に見違えるような選手となる可能性も十分にありそうだ。