週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#20】甲子園決勝決めた148キロ右腕、関東第一・坂井遼 宮崎商の大型遊撃手・中村奈一輝は大舞台で成長

西尾典文
 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 夏の甲子園も佳境を迎えていますが、今回は本大会に出場した中で光るパフォーマンスを見せた投手と野手を1人ずつピックアップして紹介します。
(企画編集:Timely!編集部)

*現時点のレベルバロメーター:★の数
★★★★★ 5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆ 4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆ 3:上位指名(2位以上)の可能性あり
★★☆☆☆ 2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆ 1:育成であれば指名濃厚

「昨年秋から急成長!東京が誇るMAX148キロ右腕」

関東第一の坂井はコントロールで大きな成長を見せた 【写真提供:西尾典文】

坂井遼(関東第一 3年 投手 178cm/78kg 右投/右打)

【将来像】木沢尚文(ヤクルト)

コンパクトなテイクバックでも上から鋭く腕が振れる点は共通点。適性もリリーフか

【指名オススメ球団】中日
先発、リリーフともベテランが多い投手陣の底上げが必要なチーム事情から

【現時点のドラフト評価】★☆☆☆☆
育成であれば指名濃厚

 今年は全国各地に好投手が多いが、東京でナンバーワンと言える存在が関東第一のエースである坂井だ。しかし入学当初から決して評判の選手だったというわけではない。江戸川南ボーイズでは外野手で、本格的に投手に転向したのは高校入学後。肩の強さはあってもなかなかコントロールが安定しなかったという。2年秋の新チーム発足当時も背番号は10だった。

 秋の東京都大会での好投が認められて明治神宮大会では背番号1を背負うと、リリーフで全試合に登板し、チームの準決勝進出に大きく貢献。大会連覇中だった大阪桐蔭を相手にも失点は許したものの、粘り強い投球を見せた。冬から春にかけても順調に成長。選抜でもチームは初戦で敗れたが、最速146キロをマークしている。

 そして迎えた夏の甲子園。初戦の北陸戦で坂井はチームが逆転した直後の4回表から2番手で登板。6イニングを被安打3、四死球0、5奪三振で無失点という見事なピッチングでチームを勝利に導き、選抜の雪辱を晴らして見せた。この1年間で大きく成長したのがコントロールだ。北陸戦でも立ち上がりの4回こそ粘られて19球を要したものの、それ以降は全て15球以内で抑えており、6イニングで投じた球数は81球。そのうちボール球はわずかに25球で、投球の約7割がストライクだった。

 ストレートも力を入れるとコンスタントに145キロ前後を記録し、最速は148キロをマーク。178cmと投手としては決して上背がある方ではないが、高い位置から腕が振れ、ボールの角度もあり、低めでも勢いが落ちないというのも大きな長所である。フォームに目立った欠点はないだけに、フィジカル面が強化されれば、150キロの大台突破も時間の問題ではないだろうか。

 一方で気になる点があったのも確かである。一つ目は力の抜き方があまり上手くないという点だ。夏の大会は暑さもあってある程度力を抑えながら投げ、勝負所でギアを上げるという投手も多いが、坂井は力を抜いたときのボールは明らかに勢いがなく、肘も少し下がっているように見えた。打者からすると変化球かと思って見送ると変化しないため戸惑うこともあったようだが、高いレベルで勝負するためにはもう少しアベレージの出力を上げる必要があるだろう。また変化球でも腕の振りが緩み、全体的にどのボールも変化が早いのも課題だ。このあたりが改善されれば、ストレートがもっと生きてくるはずだ。

 ただそれでも外野手出身ということもあって打者としてもスイングが強く、走塁にも躍動感があるなど基本的な運動力の高さがあるのは魅力だ。支配下指名となると微妙なラインだが、育成でもしっかり鍛えれば大化けは十分に期待できるだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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