28年ぶりの五輪切符獲得に挑むアイスホッケー男子日本代表 格上との厳しい戦いも「子供たちの夢になれるように」

沢田聡子

(右から)鈴木強化本部長、スカルディ監督、中島主将が記者発表会で抱負を語った 【(C)JIHF Photo by IceHockeyStream.net】

長野五輪での1勝は「本当にすごいこと」

 アイスホッケー男子日本代表が最後に経験した五輪は、開催国枠で出場した1998年の長野大会だ。男子日本代表主将の中島彰吾(レッドイーグルス北海道、30歳)は、当時4歳だった。長野五輪の記憶について問われると、中島は「いや、正直あんまり…」と口ごもった。年齢を考えれば無理もないが、日本代表の選手となった今、中島は動画で長野五輪の日本対オーストリア戦を観たという。PS(ペナルティーショット)戦までもつれた末、日本が五輪での貴重な勝利を挙げた試合だ。

「最後PSで1勝を勝ち取ったのも、現実を見たら本当にすごいことなので。あらためて大人になってから観てみると、幼い時の記憶というか、思いとはちょっと違ったものを感じました。(今回の最終予選で)観ている方々にどういう思いを与えられるか分からないですけど、いいものを与えられるようになりたいなと思っています」(中島)

 8月14日、2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の男子アイスホッケー最終予選 記者発表会が行われた。登壇したのは、鈴木貴人強化本部長、ジャロッド・スカルディ監督、中島彰吾主将の3人。最初に、鈴木強化本部長が最終予選の概要を説明した。

「現状オリンピック出場国は、まずランキング順に8チーム(カナダ、ロシア、フィンランド、チェコ、スイス、アメリカ、スウェーデン、ドイツ)、そこに開催国のイタリアが加わり、計9チームが今決定している状況です。

(出場国12か国のうち)残り3つの枠を、グループD・グループE・グループFで争う戦いとなります。日本はグループFに入っており、デンマーク・ノルウェー・イギリス・日本の4チームのうち、1位のチームのみがオリンピックへ行ける権利を持ちます。デンマークのオールボーという、コペンハーゲンから少し離れた場所で開催されます。期間に関しては、8月29日から9月1日までとなっております」(鈴木強化本部長)

 グループFに入った4か国の世界ランキングは、デンマーク11位、ノルウェー12位、イギリス17位、日本24位。グループ1位になった国のみが、2026年五輪の出場権を得る。日本にとっては、格上のチームに挑む厳しい最終予選となる。自力での五輪出場となれば、1980年レークプラシッド大会以来の快挙だ。

 日本代表は、2026年五輪3次予選(2月、ハンガリー・ブダペスト)を突破して最終予選に進んだ。その後世界選手権(4~5月、イタリア・ボルツァーノ)では、2016年に降格して以来8年ぶりの出場となったディビジョンIグループA(2部相当)で戦い、残留を決めている。

 2026年五輪3次予選で日本代表を最終予選に導いたペリー・パーン監督の後任として4月に就任し、世界選手権で日本代表を指揮したスカルディ監督は、五輪最終予選への意気込みを語った。

「世界選手権では、われわれの格上(日本は2023年世界ランキング25位)であるスロベニア(同17位)やハンガリー(同19位)、イタリア(同18位)と戦いました。勢いが必要だった場面、勢いが出せなかった場面、いろいろな場面があったと思いますけれども、われわれは多くを学びました。そこで学んだことを、今回このトーナメントにぶつける時期に来ていると思います。格上のチームとの(試合の時の)勢いの出し方を含め、世界選手権で学んだことを今回出したいと思っております。

 われわれスタッフとしても、オリンピックに向かう大きな戦いに臨めることは光栄です。この大事な大会に向かって選ばれた選手たちを、われわれも誇りに思っております。このチームで、オリンピック出場に向けて頑張りたい」(スカルディ監督)

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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