28年ぶりの五輪切符獲得に挑むアイスホッケー男子日本代表 格上との厳しい戦いも「子供たちの夢になれるように」

沢田聡子

「チームファースト」に徹する日本のプレー

パリ五輪日本代表に抱いたリスペクトを語った中島主将 【(C)JIHF Photo by IceHockeyStream.net】

 日本は8月29日にノルウェーとの初戦、30日に対デンマーク戦、9月1日に対イギリス戦を迎える(すべて現地時間)。鈴木強化本部長は、3次予選や世界選手権を経た日本代表が、格上の国に対する戦い方を身に着けつつあると評価する。

「3次予選では、(2023年世界)ランキング19位のハンガリーを破って最終予選までたどり着いています。4月に行われました世界選手権では、(2023年世界ランキング18位の)イタリア(3-4)や(同17位の)スロベニア(1-3)と(敗戦ながら)接戦をすることができて、チームにとってはすごく自信になっている部分もあります。

 最終予選で対戦するイギリス・ノルウェー・デンマークは、力が拮抗(きっこう)しています。日本も初戦(対ノルウェー戦)がすごく大切ですけれども、いいチャレンジをできるような相手となっていますので、選手たちはいい準備をして、いい戦いをしてくれると思っております」(鈴木強化本部長)

 会見で、近年ランキング上位国と接戦を展開できるようになった理由を問われた中島主将は、「個々のスキルも徐々に上がっていることもあると思いますし」とし、言葉を継いだ。

「それぞれの選手がしっかりとチームファーストでプレーできている部分が、まずは要因かなと思っています。自分がやりたいプレーをやるだけではチームとして勝てないので、チームのことを思いながらプレーする選手が増えているのが、格上といい勝負、接戦を出来ている理由の一つかなと思っています」(中島)

 7月に北海道苫小牧市で行われた代表選考合宿には、FW19名・DF13名・GK4名が参加した。「ここ数年、代表にエントリーしていないような選手も参加してもらった」と鈴木強化本部長は語る。

「監督から選手たちに『スタッフが選ぶのが難しくなるような競争をしてほしい』と伝えて合宿を行ったんですけれども、本当にハードな合宿を行ってくれて。すごくいい競争が生まれ、本当にいい準備ができた合宿となりました。その中で最終的に、今回FW 13名・DF 8名・GK 3名の選手が選考されました」(鈴木強化本部長)

 五輪最終予選でロースターに入れるFWは12名・GKは2名であるため、FWとGKは今のメンバーから各1名ずつ外れることになる。

「8月15日から25日まで、オールボーの近隣のヘアニングというところで事前合宿をします。そこで23日と25日に、デンマークのクラブチームとテストマッチを2試合行います。そこで最終ロースターを決めて、今大会に臨もうと思っております。

(男子日本代表は)2016年にラトビアで行われた2018年平昌五輪最終予選を最後に、しばらく最終予選には駒を進めていなかったところを、今回選手たちの努力で最終予選の切符をつかみ、さらに上の目標を持って皆ここまで努力してくれています。私自身もすごく楽しみにしておりますし、皆さんも是非この大会を楽しみにしていただけたらと思っております」(鈴木強化本部長)

 鈴木強化本部長は、まだ正式決定はしていないと前置きしつつ「ライブ配信ができるように、今準備を整えております」とも語った。

 会見では、中島主将に対し、男子代表が五輪出場権を獲得することによるアイスホッケーの競技人口への好影響について質問があった。

「アイスホッケーの競技人口も減少傾向にあって、それをどう改善すべきかというと、一番簡単なのは強くなること。僕たちシニアの代表が勝って、たくさんのメディアに出演することが、アイスホッケーを知ってもらうことにつながる。子供たちが目にする機会としては、それが一番早いと思う。

 アイスホッケーがこれからもっと競技人口を増やしていくため、子供たちに夢を与えるという部分では、オリンピックは非常に大事になってくると思うので。『オリンピックは夢の世界じゃない』というところを、今回見せられるように。(代表に)選ばれた24人の中にも、小さい頃の目標がオリンピック出場だったという選手が多くいると思うので、僕たちの夢・子供たちの夢になれるように、しっかりと戦いたいなと思っています」(中島)

 中島主将は、直近まで行われていたパリ夏季五輪についても問われている。

「同じスポーツ選手として、オリンピックに出場するために血のにじむような努力を重ねてきて、その場にいると感じているので。単純にリスペクトする気持ちがありますし、その戦っている姿が本当に格好良く見えていたので、もちろん憧れます。日の丸を背負って戦っている姿は日本人であれば応援したくなりますし、『そういった存在に僕自身もなりたいな』という思いで、今回のパリオリンピックは見させていただいた」(中島)

 日本代表がPS戦を勝ち抜いて勝利を手にした長野五輪での対オーストリア戦を、筆者は一観客として会場のビッグハットで観た。26年を経ても、当時の興奮は忘れ難い記憶として残る。デンマークの地で戦いに臨む男子日本代表が、五輪にしかない熱狂を再びもたらしてくれることを、願ってやまない。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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