金メダルでも「不満」を持てる幸せ やり投げ・北口榛花が到達した“究極の高み”
「満足できない」という幸せ
北口は愛嬌と真剣さが両立したアスリートだ 【写真は共同】
北口は2024年前半の「追い込まれた状況」を何とか脱し、金メダルをつかみ取った。それでも彼女の言葉から、栄光は過程であることが伝わってきた。つまり彼女は金メダル以上の高みを目指している。別の見方をするなら「金メダルを獲得しても満足しない」レベルのアスリートだからこそ、彼女は金メダルを獲得できた。
親しみやすい笑顔や、投てきの合間にカステラを食べる「緩い」様子も間違いなく北口の魅力だ。一方でやり投げについて語り始めると突き詰めすぎるゆえの葛藤、他の人と共有できない感覚を持つ孤独が伝わってくる。
もっとも、それは決して後ろ向きな現実ではない。こんなコメントが印象に残った。
「みんなが目指している1試合で勝つのはそう簡単ではないので、すごく嬉しいです。それでも満足できない理由があるのは、とても幸せだなと思います」
金メダルを獲得しても「不満」が持てる――。それは彼女がアスリートとして究極の高みに達しているからだ。