パリ五輪バレー男子決勝「ちょっと次元が違った」 元日本代表・山村宏太が唸ったフランスの強さ
もし日本が決勝の舞台に立っていたら…
もしもこの場に日本がいたらどう戦ったのか。この決勝のパフォーマンスだけを見ると、別次元の戦いにも思えますが、決してチャンスがないわけではなかった。
日本対アメリカ戦の後も「シェアの時代」という表現をしましたが、やはり僕のなかで、それを最も体現していたのはアメリカだったと思っています。そして見ていて一番面白かったのがフランスのバレーボールでした。
でもそう考えると、日本代表もワクワクドキドキさせてくれるバレーボールを見せ続けてくれた。ネーションズリーグや昨年のオリンピック予選で、チームとしての強さを磨いてきたのが日本の強みであり、僕も含めたたくさんの人が期待するチームになった。
ただ、今大会に関して言えば1次リーグは石川祐希選手のパフォーマンスがなかなか上がらず、苦しい戦いが続きました。そして石川選手の状態が上がらないことで、日本が一気に崩れてしまうケースもあった。イタリア戦はさすがのパフォーマンスを見せていましたが、それでも一歩届かず。チームとして見れば、薄氷を強く突きながら渡らなければならないような状況がずっと続いていました。
ベスト8というのも立派な結果です。でもメダルを目指して戦ってきたことも事実であり、どうすればその域に達することができるのか。薄氷を厚くするためには、まず個人の力をつけることが不可欠です。
これまで石川選手がパイオニアとなり海外へ渡り、今シーズンはセリエA王者のペルージャでプレーする。彼のように世界で自分を磨く選手が増えていくことが最優先です。そうやって個々が力をつけることで、各ポジションの選手層が厚くなって、薄氷から分厚い氷になる。
ちょっとどこかが欠けたぐらいでは崩れないような層の厚さをつくっていく必要がある。実際この日本代表は、そうなれば日本バレーは必ず世界に通用する、というものを見せてくれた。それこそが、フィリップ・ブラン監督がつくりあげてきたこの7年間でした。
チームとしても成熟して、これほど期待できるチームがそれでも結果を出すことができなかった。僕も関係者の1人として、「4年後に向けて頑張ろう」と簡単には言えないダメージがありました。
でもここから前に進むしかない。世界のバレーボールのスタイルを見ていても、これまではパイプを多用して、いかにアウトサイドヒッターの攻撃を活かすかと考えられていたのが、パリ五輪ではパイプよりもむしろミドルで切る。ミドルで決めるのが当たり前、とスタンダードも変化していた。対日本だからミドルを多用されているのかと思っていましたが、決勝を見てもパイプの本数よりもミドルの本数のほうが多かった。これからのトレンドになっていくかもしれません。
日本だけでなく、世界もオリンピックが終わればチームが大きく変わります。若い世代、そして日本バレーボール界全体として本気で世界を目指していけるのか。残された課題も含め、チャレンジしてほしいし、しなければならない。それこそがこれからに向けた課題だと受け止めています。
(企画・編集/YOJI-GEN)