惜しくも金を逃したクライミング安楽宙斗 17歳が「悔しさ」「課題」と引き換えに得たもの

大島和人

プレッシャーも良い経験に

その可能性を引き出すために、パリはいい経験となる 【写真は共同】

 スポーツクライミングの会場は音楽が流れ、DJがハイテンションに盛り上げながら競技が進む。準決勝1位通過の安楽はボルダー、リードとも最後の登場で、DJは「ソラト、ガンバレ!」とわざわざ日本語で声をかけるほどの力の入れようだった。

 安井コーチは安楽の「硬さ」「プレッシャー」についてはこう説明する。

「基本的には彼は力を抜いて、リラックスして、スイングで登るタイプです。今日は確実にいきたかったのか、力を込めて取りにいく動きになっていて、全体的に硬かった。17歳の子が大舞台の最後に出て、DJも宙斗のときだけ煽り方が違ったから、相当なものを感じていたと思います」

 安楽は千葉県内の公立校に通う高校3年生。パリ五輪は「夏休み期間」だが、大会参加、トレーニングにはまだ制約がある。クライマーとしての課題もはっきり残っている。

 絶対的な優勝候補として臨んだパリ五輪で、金メダルを「取り逃がした」のだから、悔しさが上回るのは当然だ。一方で難しいコース、プレッシャーや硬さといった悪条件の中で銀メダルを獲得した成果は見逃せない。

 17歳の少年が優勝候補として世界の注目を浴び、DJから名前を連呼され、会場の大声援を受けたことは、それ自体に価値がある。この経験はこれからの人生で、きっと彼の糧になるだろう。安楽の奮闘を称えるとともに、伸びしろに期待したい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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