週刊MLBレポート2024(毎週金曜日更新)

試合中にデータを分析して打席ごとに修正 「33号本塁打」に見る、大谷翔平の卓越した“アジャスト能力”

丹羽政善

感覚的な指導をデータで補う

試合中にタブレットでデータを確認する大谷。MLBではすっかりおなじみとなった光景だ 【Photo by Brandon Sloter/Image Of Sport/Getty Images】

 いずれにしても一連の数値、大谷の言葉から分かるのは、いまの選手らが、どう1打席1打席、適応を試みているのか、というプロセスである。

 肩が開いている、手で打ちにいっている――。これまで指導者はそんな言葉をかけ、選手にアドバイスをしてきた。それが間違いだと言っているわけではない。いま、そうした言葉を客観的なデータで補うことで、選手を納得させるのが、デフォルトになりつつあるのだ。

 そして進化すると、大谷のように自分で数値を見て課題を把握し、必要なアジャストを行ってしまう。守らないので時間がある大谷は、次の打席に備え、ドジャー・スタジアムなどではケージに向かい、スイング軌道がおかしければ映像やデータと突き合わせて、微調整を試みている。

 冒頭で大谷は「(室内)ケージがないので、どうやって試合の中で次の打席、次の打席に合わせていくのが難しい球場」と話したが、それもまた、そうした取り組みを裏付けているのではないか。

 さて、大谷は今季、8回以降の打率、出塁率、OPSがリーグトップだ。(8月6日現在。75打席以上)

打率   .405 (.275)
出塁率  .489 (.360)
OPS  1.249 (.886)


 カッコ内がキャリア平均だが、打席を重ねながら最適解を導こうとするさまが、こうして結果にも現れている。

 これが今年の大谷の進化の一端ーーそう呼んでもいいのかもしれない。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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