パリ五輪のアーティスティックスイミングは“印象点”なしの一発勝負 日本代表・中島HC「最後の最後まであきらめずに」

沢田聡子

新生日本代表デュエットの比嘉/佐藤

日本代表デュエットは比嘉の華やかさと佐藤の高い技術が持ち味 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 チーム競技のメダリストは7日(日本時間8日未明)に決まり、1日おいた9日(日本時間10日未明)からデュエット競技が始まる。デュエットはTR、FRの順に行われ、2種目の合計点で順位が決まる。

 日本代表デュエットの比嘉もえ/佐藤友花は、今年5~6月にかけて行われたワールドカップ・カナダ大会が初出場の試合だった。臨機応変にDDを上げていかなければならない現状を考慮し、天性の華がある比嘉のパートナーとして高い技術力を持つ佐藤が抜擢されたのだ。デュエットについて、中島HCは次のように語っている。

「(デュエットは)チームの種目がすべて終わってから、中一日しか練習時間がないので。(チームの出場枠を獲得できず)デュエットのみに専念してくる国が多い中で、私たちがどう戦っていくかというのは、(パリへ出発する前に)日本でどれだけ準備するかにかかっていると思う」(中島HC)

 中島HCの念頭には、ウクライナの存在もあると思われる。長年好敵手として日本と競り合ってきたウクライナは、東京五輪ではデュエット・チームともに4位だった日本を上回り、2つの銅メダルを獲得した。しかし、国内情勢が不安定であることも影響したのか、パリ五輪ではチームの出場枠を獲得できず、デュエットのみの出場となる。双子のアレクシーワ姉妹は東京五輪でチームのメンバーに入っていた実力者で、デュエットにすべてをかけてくるだろう。

 厳しい戦いに挑む日本代表だが、中島HCは「常に前向きに、明るく、元気に、というのがチームの取り柄かなと思います」と語った。

「歴代の(日本代表の)先生方や選手の思い、AS界の思いをしっかりつなげられるように。やっぱり結果を出さないと次にはつながらないと思うので、とにかく結果を出すためにはどうするかという部分と、やっぱりチームとして、皆さんに応援してもらえる、人に感動を与えられる演技をとにかく目指したいと思います」(中島HC)

 100年に1度の逸材ともいわれる比嘉も、表彰台への意欲を示す。

「メダルを、デュエットでもチームでもとりたいです」(比嘉)

 そしてメダルの行方以外にも、ASには見てほしい部分がある。アメリカチームがマイケル・ジャクソンの曲を使うTRでみせるムーンウォークや、カナダチームが「ヒップホップクラシック」というテーマで展開するARは要注目だ。ウクライナのデュエット代表・アレクシーワ姉妹は、TR「戦争物語」で母国の現状を訴える。

 また日本チームのFR「チェス」は、2022年世界選手権ブダペスト大会から、マイナーチェンジしつつ泳ぎ続けてきた傑作だ。ゲーム音楽を使うモダンな「チェス」は、2023年世界選手権福岡大会の芸術点では中国を上回る評価を受けた。終盤の振付で、選手たちは「自分たちの結果にもチェックメイトする」のだという。

 DDに追われベースマークに脅かされながらも、ルーティンのテーマを伝えようと全力で泳ぐマーメイドたちが、後半にさしかかるパリ五輪を華やかに彩る。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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