週刊MLBレポート2024(毎週金曜日更新)

「えっ、それだけ?」ファンもメディアも不満顔 今夏のドジャースのトレード戦略を考察してみた

丹羽政善

ベッツは右翼へ再コンバートされるか

7月25日のジャイアンツ戦の前に練習を行うベッツ。復帰は8月半ばを見込む 【Photo by Jayne Kamin-Oncea/Getty Images】

 一方で、ドジャースは目先の勝敗に興味はない。残りを勝率5割でいけば、プレーオフに行ける。そこで勝てるかどうかなので、トレードなど所詮、現状維持の手段。けが人が戻ってくるまで、どう耐えるかなので、ドラスティックな動きは必要なかったーーとの指摘もある。

 であれば、分からないでもない。ユーティリティを3人も獲得したのは、ベッツ、ミゲル・ロハス、クリス・テーラー、フリーマンらの不在を穴埋めするもの。確かにこれで、野手の不足は補える。裏を返せば、昨オフの補強は間違っていないーーそんなフロント陣の自信が透ける。

 ただ、彼らの獲得には、もう少し深い意味もありそう。オレンジ・カウンティレジスター紙のビル・ブランケット記者は、これでベッツ、ロハスらが復帰した場合、二塁を守れる選手が8人、ショートが7人、サードが6人ということになると指摘していた。

 それが何を意味するのか?

 おそらくベッツが復帰した際、もはやショートのポジションはないのではないか。多くが、右翼への再コンバートを予想する。

 ただ、ベッツは納得するのか。ハレーションをもたらすことはないのか? 何度も守備位置を変更された挙げ句、ショートは無理だと烙印を押されたようなもの。

 デイブ・ロバーツ監督は7月30日の会見で「ベッツはショートとして復帰するのか?」と聞かれ、「彼はそのつもりだ。その考えをサポートする。8月半ばに復帰すると思うが、変わるとは思わない」と言いつつ、徐々に曖昧になった。

7 月 30 日のパドレス戦の前に会見を行うロバーツ監督 【Photo by Orlando Ramirez/Getty Images】

「復帰の際に彼と話をして、彼とチームにとってベストなシナリオは何か、話すことになる。彼がどこを守ることが、チームにとって一番いいのか。また、彼にとっていいのか。それ次第だ」

 確かにいま、チーム状態は良くない。トレードがその答えになったかと言えば、リリーフにおいて不満が残る。野手は不足を補うのに十分。しかし、リスクも伴う。

 アナハイムから見えていたロサンゼルスの芝の色はどうやら、ユニホームほど、鮮やかな青ではないようだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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