元バスケ女子日本代表、矢野良子のアメリカ戦解説 絶対王者に完敗して得た「大きな教訓」

青木美帆

20分程度のプレータイムでチーム最多(両チームを通じても最多タイ)の24得点を挙げた高田。アメリカに完敗した日本にあって、ベテランの存在感を示した 【Photo by Gregory Shamus/Getty Images】

 東京五輪決勝の再現となった、パリ五輪女子バスケの1次リーグ初戦、日本対アメリカ。リベンジを誓った世界ランキング9位の日本だったが、大会7連覇中で世界ランキング1位の絶対王者に76-102と完敗を喫した。何が通用し、何が通用しなかったのか。次戦ドイツ戦に向けて改善すべき点はどこにあるのか。2004年アテネ五輪代表の矢野良子さんに話を聞いた。

2対2を何度も何度も繰り返す意識

掲げるのは速い展開のバスケ。経験豊富な高田、町田に合わせられるこの林が同時にコートに入った第4クォーターは、流れるようなプレーから得点もできていた 【Photo by Gregory Shamus/Getty Images】

 初戦ということで、堅さが見られるんじゃないかなと予想していましたし、実際、なかには「緊張している」と口にする選手もいましたが、総じて早い段階でオリンピック特有の雰囲気にも慣れていたような印象を受けました。

 絶対に勝たなければいけないドイツやベルギーではなく、ある程度「どこまで食らい付けるか」にフォーカスできる絶対王者のアメリカが初戦の相手だったのは、“不幸中の幸い”だったようにも感じます。

 日本の先発メンバーは、宮崎早織、山本麻衣、林咲希、馬瓜エブリン、馬瓜ステファニーの5選手。4番ポジションと5番ポジションのスタメンを、赤穂(ひまわり)選手、高田(真希)選手から馬瓜姉妹とした明確な意図は分かりません。おそらく、計算が立つ選手たちを後ろから出したほうが戦いやすいという判断だったのではないでしょうか。

 ただ、前半も後半も入りがあまり良くなかったですし、それ以外の時間帯でも要所で失点につながるプレーが何度となくありました。ターンオーバーの数はアメリカと同じ「12」で決して多くはありませんが、初戦の緊張や相手がアメリカという点を差し引いても、もったいなかった。20点差以内、できれば15点差くらいで終盤まで付いていきたかったし、本来の彼女たちの力を考えれば、それができたと思いますから。

 もちろん、良いプレーも随所で見られました。時間帯によっては、恩塚(亨)ヘッドコーチが掲げる、速いペースの展開も体現できていましたね。

 失点してもすぐにリスタートし、相手がディフェンスに戻り切る前に5人全員がフロントコートに入る。そこからボールを止めることなく流れるようにプレーすることで、アメリカがガードのディフェンスをビッグマンにスイッチせざるを得ない状況を作り、町田(瑠唯)選手や宮崎選手、山本選手がドライブに持ち込む。そこにカバーの選手が寄ることで、高田選手や赤穂選手、林選手がノーマークでシュートを打てていました。

 20分程度の出場時間でチームトップの24得点を挙げた髙田選手の、きちんと足を使って何度も何度もガードにスクリーンをかけに行く姿勢や、ポストプレーを使いながらの状況判断もさすがでした。

 この試合では、ピックアンドロールなどの2対2がワンプレーで終わり、シュートを打てなかったミスが何度か見られましたが、そこから切り替えて「もう1回、さらにもう1回」とプレーできていたのが、経験豊富な町田選手と高田選手でした。彼女たちに合わせられる林選手が同時にコートに立った第4クォーターは、流れるようなプレーから得点ができていましたから、2対2を何度も何度も繰り返す意識は今後の戦いでも大切になってくると思います。

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著者プロフィール

早稲田大学在学中に国内バスケットボールの取材活動を開始。『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立し、現在はBリーグや学生バスケットボールをメインフィールドに活動中。著書に『Bリーグ超解説 リアルバスケ観戦がもっと楽しくなるTIPS50』『青春サプリ。心が元気になる5つの部活ストーリー』シリーズなど

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