インターハイ「夏の16強」決定 福岡大若葉の新風、米子北の伝統まで多士済々

川端暁彦

米子北の「伝統」に感じた風

帝京と米子北、実力校同士の対戦は死力を出し尽くし合った末の決着に 【撮影:川端暁彦】

 2回戦での注目カード、米子北と帝京(東京1)の対戦は前者に軍配が上がった。

 試合は帝京がボールを支配することを狙い、米子北がゴールを支配することを狙うという、恐らく両チームの選手たちを含めて全員が予想していた形のまま、0-0で推移した。

 ただ、最終的にシュート数が6対5と非常に少ない上に米子北が上回っていたあたりに試合の勝敗が分かれた要素も見え隠れした。

 実際、米子北は球際で体を張るのはもちろん、ちょっとしたダッシュをサボらない、背の高い選手はほとんどいないもののヘディングの競り合いは本当に負けない。決勝点はロングスローからだが、それも“らしい”と感じさせる戦いぶりだった。

 面白かったのは、応援に回った部員たちの横から試合を見る形になっていたため、彼らの声がよく聞こえたこと。そして応援で強調されたのは「球際」や「競り合い」、「頑張り」の部分だった。

 ロングフィードをサイドの深い位置に差し込まれたとき、サイドバックの選手が素早くスライドしながら相手近くまで足を運んで対応したようなシーンでは大喝采。こうしたディテールへのこだわりが共有され、部員全体に「良いプレー」として認識されているのがよくわかった。

 何よりその声かけのポジティブさも特筆モノ。応援の横で試合を見ていると、監督の悪口やら「なんでアイツが出ているんだよ」といった不満の声が漏れ聞こえてきてしまうこともあるのだが、そうした声は皆無。とにかくピッチの選手を勝たせてやろうという思いが詰まっていて感心させられた。

 中村真吾監督も「大会で試合を戦いながらチームとしての一体感が出てきた感覚があって、それが今日の勝因の一つ」とした上で、「それを作ってくれているのは応援に回った選手たち」と強調した上で、こう語った。

「彼らは本当に応援もサポートも全力でやってくれて、さらにこのあとは練習試合もあるんですけれど、そこでもきっと全力でやってくれると思います。特に3年生で夏の(ベンチ入りの)メンバーから漏れるのは本当にキツいと思うんですけど、それでもやってくれる。そして、あの中から絶対に冬のメンバーに食い込んでくる選手が出てくる。それがサッカーのスタイルとはまた違う、僕らの『伝統』です」

 集団として培ってきた文化や土壌が生み出すものの強さを感じられるのも高校サッカーの面白いところ。そんなことを再確認する良い機会になった。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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