AS日本代表、パリ五輪は上がり続ける難度点への挑戦 チームの取り柄は「常にポジティブ」

沢田聡子

テーマ性の表現も「忘れないようにしたい」

「常にポジティブに前向きに、明るく、元気に、というのがチームの取り柄」と中島HC 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 しかし比嘉と佐藤、そして中島HCは、すぐに事態を前向きにとらえ始めた。

「(比嘉・佐藤・中島HCの)3人ともポジティブには捉えられていて、逆に『今出してきてくれてよかったね』っていう。オリンピック本番でいきなりその点数でこられて『どうしよう、どうしよう』ってなるより、『これだけ上げてきたんだ』っていう演技を今やってくれたから『ちょっとありがたい』というのはあります」(比嘉)

「いつも(他国の難易度に)『えっ』ってなって、難易度上げて、なんだかんだできて…ということの繰り返しなので。今は驚きがけっこう大きいんですけど、今回もなんだかんだ、最終的には、しっかり自分たちの良さを引き出すルーティンを作れるんじゃないかなと。今は何も手を着けていないのですが、勝手に思っていて。

 逆に、五輪本番まで1カ月もある中でルーティンを見せてくれて『ありがとう』ではないけれど、オリンピック本番でそれを見せられた方がちょっと落ち込んじゃうと思うので、それは時間がまだ残っていて良かったなと思います」(佐藤)

 佐藤はさらに、DDを重視するだけではない演技を目指す意志をみせた。

「高い難易度のルーティンを作るのはもちろんなんですけど、難易度を高くしてただそれを泳ぐだけではなくて、『ペガサス』というテーマ性やストーリー性のあるルーティンを泳ぐということだけは、忘れないようにしたいと思います」(佐藤)

 前向きなタイプなのかと問われた佐藤は「元々はネガティブで後ろ向きな、暗い性格かなと自分では思います」と否定した。

「普段はそうなんですけど、でもここのチームにいる時は…前向きな自分を演じているわけではないけれど、チームが前に向かっている中で、一人でも『いや、無理だ』って思っている選手がいるだけで、チームが停滞してしまうので。このチームでいる間は、常に前向きに過ごすようにしています」(佐藤)

 中島HCはこの3年間を振り返り、次のように述べている。

「選手たちがとにかく自然に心の底から『こうしたい』『ああしたい』という部分を、出したいという思いはかなりあるので、そこは譲らずにやってきました。

 常にポジティブに前向きに、明るく、元気に、というのがチームの取り柄かなと思います」

 パリ五輪AS競技の開始まで、あと約1カ月。日本代表は、“DD大会”パリ五輪に、テーマ性のあるルーティンをひっさげて臨む。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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