エンゼルス時代の大谷が被った「兜」はどこへ? “重要な終結”を迎えた水原被告の詐欺事件
罪を認めた水原被告
6月4日、カリフォルニア州サンタアナの連邦地裁に出廷した水原被告 【写真:ロイター/アフロ】
「あれからなにか進展があったか?」
「まだ、ザワザワしているのか?」
週明け(6月4日/現地時間、以下同)に3度目の出廷が控えていたこともあるが、会話を交わした誰もが、大谷の関与など端から疑っていなかった。ある選手は「翔平は一番、そういうところ(ギャンブル)から遠いところにいる」と言い切り、別の選手は「事件には驚いたけど、翔平が関わったなんて疑ったこともない」と断言した。
水原被告についても「驚いた」という声が多かったものの、1人だけ「言われてみれば、というところはある」と明かしている。「実際にギャンブルをしている現場を見たり、聞いたりしたわけではないけれど」。
4月には、タイラー・グラスノー(ドジャース)も「翔平が何もやっていないことは、すぐに分かった」と話す一方で、「一平には何か裏があると感じていた」と、意味深な発言をしている。
山本由伸、ギャビン・ストーンと並ぶ、チームトップタイの6勝を挙げるグラスノー 【Photo by Ric Tapia/Icon Sportswire via Getty Images】
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“何か裏”
言葉には含みがあり、言えないこともあるのだろうということは察しがつくが、水原被告の話をするとき、多くの時間を一緒に過ごしてきたエンゼルスの選手らは顔をしかめ、何度もため息をついた。
その水原被告は6月4日、銀行詐欺などの罪を認めた。
「ギャンブルの借金があり、被害者A(大谷)のお金を使うことしか、思いつかなかった」などと説明。次回、10月25日に量刑が言い渡される。
今回も、ロサンゼルスの地元メディア、日本のメディアだけでなく、CNNやBBC(英国放送協会)までもが事件の経過を伝え、ロサンゼルスの地元放送局はサンタアナの連邦地裁前から生中継。全米ネットワークのニュース番組も、「現場からです」と中継を挟んだ。つまり、全米のどこにいても、ニュース番組をつければ、水原被告の事件が流れたのである。
特に新事実はなかったが、 午後から捜査を取り仕切ったマーティン・エストラーダ検事が会見を行った際に、「水原被告は市民権を持っていないので、日本へ強制送還される可能性があるが、刑の執行が終わってからになる」と話した。市民権の話は初耳だった。
いずれにしても有罪を認めたことで、MLB機構も調査を終了するとし、ドジャースも同様の対応を行い、大谷も声明を出している。
「捜査が完了し、罪も全て認められた今、私及び家族にとっても重要な終結を迎えることができました。すべての証拠を完全に明らかにしながら、これほど徹底的かつ効果的な調査を迅速に遂行してくれた当局の方々に、心から感謝したいと思います。
これは僕にとっても非常に複雑で困難な時期でした。この間にずっと絶え間ない支援を続けてくれた僕のサポートチームに感謝しております。家族、代理人、エージェンシー、弁護士、そしてドジャースの組織全体に感謝しております。
この事件に終止符を打ち、前に進む時期が来たと思ってます。これからもこのチームの一員として少しでも勝利に貢献できるよう、集中していきたいと思っております。これからも宜しくお願い申し上げます」
量刑が言い渡される10月25日を節目と捉えることもできるが、リーグ、チーム、そして大谷自身も一区切りとした。
もちろん、だからといって事件がなかったことになるわけではない。
2021年9月から違法賭博を始め、同年11月から24年3月まで、大谷の銀行口座にパスワードを使ってアクセス。また、認証が必要な場合は、大谷になりすまして銀行に連絡。その数は約24回に上ったという。大谷が初めてのMVPを受賞した同じ時期から犯罪に手を染め、発覚する直前までそれを繰り返していたことになる。その間、まわりの人を欺き続けた。
グラスノーは“裏”という言葉を使った。しかし、本当は裏が表で、大谷の通訳としての顔が裏だったとしたら――。
冒頭で、エンゼルスのセレブレーションで兜がデビューする前、ウォリアーズのロゴをエンゼルスのステッカーで隠した麦わら帽で代用していたことを紹介したが、どう取り繕ったところで、ウォリアーズの麦わら帽は、ウォリアーズの麦わら帽なのである。