週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#09】長打と強肩が魅力のドラ1候補・渡部聖弥 複数入札もあり得るスラッガー・西川史礁

西尾典文

「侍ジャパントップチームでも躍動、東都が誇る大型スラッガー」

豪快なフルスイングが魅力の西川は、外野に転向した昨年春から打撃が総合的に成長 【写真提供:西尾典文】

西川史礁(青山学院大 4年 外野手 182cm/88kg 右投/右打)

【将来像】鈴木誠也(カブス)

豪快なフルスイングは迫力十分。センターへも打てるようになれば鈴木に近づく

【指名オススメ球団】西武
得点力不足の打線を立て直すための目玉として狙いたい

【現時点のドラフト評価】★★★★★
複数球団の1位入札濃厚

 昨年は7人もの投手が1位指名を受けた東都大学野球だが(当時の一部所属チームからは6人)、今年最注目の選手といえば青山学院大の4番を務める西川になるだろう。龍谷大平安では2年春に背番号16、7番ショートとして選抜高校野球に出場。レギュラー選手の寝坊によって思わぬ形でスタメン出場の機会を得て、3試合で3安打を放っている。しかし当時は体が細く、そこまで目立つような存在ではなかった。

 青山学院大でも2年秋まではわずかな出場機会にとどまっていたが、3年春に外野に転向すると打撃が大きく開花。昨年の4月6日に行われた駒沢大戦では1試合2本のホームランを放つなど打率.364、3本塁打の獲得でMVPとベストナインにも輝いた。西川の勢いはその後も続き、大学選手権でも4試合で15打数7安打、1本塁打の活躍でチームの優勝に大きく貢献。日米大学野球では3年生ながら4番も任された。

 全国のプロ野球ファンに西川の名前が一気に広がったのは今年3月に行われた侍ジャパンの強化試合だろう。第1戦では途中出場ながらツーベースを含む2安打を放つと、第2戦でも1番、センターとして攻守にわたる活躍を見せたのだ。この活躍には選出した井端弘和監督もベンチで思わず「凄いな」とつぶやくほどだった。

 この春のリーグ戦でも全試合で4番、センターとしてフル出場。厳しいマークもあってシーズン終盤はなかなか長打が出なかったものの、打率.318、1本塁打、7打点としっかりと結果を残し、チームをリーグ3連覇に導いている。

 西川の打撃の最大の持ち味は全身を使ったフルスイングと思い切りの良さだ。今年の春も48打席に立ちながら三振と四球はいずれも4とスラッガータイプの選手にしては非常に少ない数字となっている。大きな構えでタイミングをとる動きにも余裕があり、ファーストストライクから積極的に振ることができるのがこの結果に繋がっていると言えるだろう。またそれでいながら追い込まれてからはセンター中心に打ち返すバッティングも目立ち、対応力の高さも昨年と比べてアップした印象を受ける。相手バッテリーに与えるプレッシャーはかなりのものがあることは間違いない。一つ気になるのは、浅いカウントで少し強引に引っ張るようなスイングが目立つという点だ。これまでリーグ戦と全国大会で合計7本のホームランを放っているが、打球方向は全てレフトである。そこまで強引に引っ張らなくても飛ばす力はあるだけに、もう少し力みなく広角に打てるようになればさらに怖い打者になるだろう。

 今年の春に打撃以上に成長が感じられたのが守備と走塁面だ。卒業した中島大輔(現・楽天)にかわってセンターを任されたが、動きの良さもスローイングの強さもレフトを守っていた昨年秋までと比べて確実にレベルアップしている印象を受けた。また打者走者としての一塁までの全力疾走も徹底することができており、一塁到達タイムは筆者が確認できた限りで最速4.03秒をマーク。右打者として4.0秒台というのはかなり高水準のタイムである。

 他の4年生の1位候補と言われた選手が怪我や不調で苦しむ中で、1シーズンしっかり4番打者としてプレーし、見事な成績を残したことで西川への評価はさらに高まっている印象を受ける。この状態を維持することができれば、複数球団による1位指名の可能性も高くなるだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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