クロップ勇退とシティ4連覇、存在感示した日本人選手 プレミアリーグ「激動のシーズン」を振り返る
三笘は次世代のスーパースター候補に浮上
第2節ウルヴァーハンプトン戦、左サイドから仕掛けた三笘はぐんぐん加速し、4人の敵をかわしてゴール。開幕早々、強烈なインパクトを与えた 【写真:アフロ】
橋岡大樹のルートンは今季の昇格組のなかで唯一最終戦まで残留争いをしたが、結局は降格。残念ながらプレミアリーグで戦うにはクオリティ不足のチームにいて、今冬加入の25歳日本代表DFにこれといった見せ場は訪れなかった。
しかし明るい性格で、チームメイトやコーチ陣に“ハシ”と呼ばれ、しっかりチームに溶け込み、イングランドでの経験を全て吸収しようとする前向きな姿勢に好感を抱いた。来季はチャンピオンシップでのプレーとなるが、ここもプレミアリーグをめざし、野心に満ちたクラブがひしめくレベルの高いリーグ。そこでしっかり存在感を示し、早くチームを昇格させてプレミアリーグに再挑戦してほしい。
残る3人はそれぞれ明確なる存在感を示してシーズンを終えた。
まずはブライトンの三笘薫。惜しくも今季のベストゴール賞はマンチェスター・Uのアレハンドロ・ガルナチョ(豪快なオーバーヘッドで決めたゴール)にさらわれたが、8月19日、開幕2試合目となったウルヴァーハンプトン戦で4人抜きのとんでもない個人技を見せてゴールを奪い、いきなり輝いた。
1対1を打開するウインガーは貴重だ。が、ここまでの能力を見せつけた三笘はこの時点でプレミアリーグの次世代を代表するスーパースター候補にのし上がった。
しかし結局は怪我に泣かされたシーズンとなった。小さな怪我を抱えながら試合に出続け、年明けのアジア杯にも強行出場。イングランドに帰還後、2月18日に行われたシェフィールド・ユナイテッドとのアウェー戦で腰を痛めて長期欠場となった。
このエースの故障は、一昨年の9月半ばにブライトン監督に就任して、クラブ史上初となるヨーロッパリーグ参戦を勝ち取ったロベルト・デ・ゼルビ監督を今季限りでの退団に追い込む要因のひとつとなった。
三笘が今季絶望と公表した際、44歳イタリア人闘将は「今季は、右は(ソリー・)マーチ、左は三笘でいく。それならいけると考えていた」と話して、日本代表MFの不在を心から嘆いた。
故障者が相次いだため、デ・ゼルビ監督は冬の移籍期間中に来季の欧州参戦に不可欠な即戦力の補強を熱望したが、ブレイク前の若手を獲得し、有力選手に育て上げて高く売るというトニー・ブルーム会長の意向が覆ることはなく、デ・ゼルビ監督の希望を拒否する形になったクラブ側の処置が両者の確執を生み、昨季終了時は大ヒーローだった監督が退団を決意した。
来季はアーセナルが優勝して冨安はレジェンドになる
「点に絡みたい」とゴールやアシストに強いこだわりを見せていた冨安は、最終節のエヴァートン戦でファインショットを決めてみせた 【写真:ロイター/アフロ】
ただし、遠藤を重用したクロップ監督が勇退したことで、来季はアルネ・スロット新監督(今季はフェイエノールト監督)の下、あらためてポジション争いに勝ち抜くことが不可避となるだろう。
プレミアリーグのデビュー年でスロット監督がどのような存在感を発揮するのか。その興味とともに来季の遠藤にも注目したい。
最後に冨安健洋。今季も怪我を経験したが、最もプレッシャーがかかるシーズン終盤でレギュラーの座を奪回。リーグ最終戦では1点をリードされた状況でFW顔負けの豪快なシュートを右足で叩き込んだ。「点に絡みたい」と本人はゴールを強く意識していたが、その言葉の通りの活躍で今季を締めた。
残念ながらアーセナルは優勝をマンチェスター・Cにさらわれたが、昨季よりもさらに差を縮めての2位。クロップが去ったリバプール、そして115の違反に対する聴聞会が始まりピッチ外の雑音の激化が予想されるなか、名将グアルディオラが来季いっぱいでの勇退を示唆するマンチェスター・Cを尻目に、青年監督ミケル・アルテタが率いるアーセナルが来季こそ、プレミアリーグのトロフィーに一番近いチームとなりそうだ。
今季の最終戦で確固たる存在感を見せた冨安が、そこでレギュラーDFとして活躍するのは確実と見る。敵は怪我だけ。無事でさえあれば、アーセナルが21年ぶりにプレミアリーグを制してその一員としてレジェンドとなる。来季はそんな記念すべき年になりそうだ。
(企画・編集/YOJI-GEN)