週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#07】満を持して復調した法政大の157キロ右腕・篠木 関西No.1右腕・林は安定感抜群

西尾典文

「安定感は大学球界全体でも屈指。関西の右腕ではナンバーワンの声も」

下級生の頃と比べてスピードもコントロールもレベルアップした大阪経済大・林翔大 【写真提供:西尾典文】

林翔大(大阪経済大 4年 投手 176cm/82kg 右投/右打)

【将来像】伊藤大海(日本ハム)
多彩な変化球を巧みに操り、勝負所ではギアを上げられるところは伊藤との共通点

【指名オススメ球団】ヤクルト
安定感があり、タフな投手がチームには必要なため

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 リード文でも触れたように今年の関西の大学球界は関西大の金丸夢斗が圧倒的な注目を集めているが、右投手でナンバーワンの評価になりそうなのが林だ。高校時代は篠木ほどの知名度はなく、乙訓では甲子園出場経験もないが、当時から140キロ以上のスピードを誇る本格派として京都府内では評判となっていた。大学進学後も1年春からいきなりリーグ戦で登板しているところにも、チームの期待値の高さがうかがえる。

 実際に現地で初めて林のピッチングを見たのは2年春のリーグ戦後に行われた関西オールスター5リーグ対抗戦だった。この試合は関西にある5つの大学野球連盟がそれぞれ選抜メンバーでチームを構成して行われているものである。交流戦の意味合いも強いが、優勝した連盟には秋の明治神宮大会出場をかけた大阪市長杯のシード権が与えられるため、どの連盟も各チームの主力が出場することになる。この年は林の2学年先輩になる才木海翔(オリックス)が高い注目を集めており、金丸も関西学生野球連盟の一員として出場している。

 林は2年生ながら近畿学生選抜との試合で先発を任せられると、3回を投げて4安打を浴びたものの要所を締めて無失点と好投。チームの勝利に貢献した。この時のストレートの最速は143キロとまだそこまで目立つ数字ではなかったが、当時のノートにも「140キロ台前半でもボールの質が良く、数字以上に速く見える」というメモも残っている。

 このシーズンで先発に定着した林はその後も才木、津田淳哉(阪神)とともに投手陣の中心として活躍。昨年秋までの通算成績は10勝3敗という数字が残っている。この春の林を見たのは4月6日に行われた開幕戦の対神戸学院大戦だ。8回にスリーランを浴びて降板したものの、7回2/3を投げて3失点、8奪三振の好投でチームを勝利に導いている。下級生の頃と比べても明らかに上半身も下半身も体つきが大きくなり、スピードもコントロールもレベルアップした印象を受ける。特に素晴らしかったのが右打者のアウトローへの制球で、キャッチャーのミットが全く動くことがないボールも多かった。長いイニングを投げることを意識してか、アベレージのスピードはそこまで速くはなかったが、勝負どころではギアを上げて、この日の最速は149キロをマークしている。変化球も多彩で、カットボールはスピードと変化の大きさにバリエーションがあり、カウントをとる少し遅いスライダーと対になるチェンジアップ、この冬に取得したというフォークも見事に操っていた。強いて言えば緩いカーブだけが思ったように決まっていなかったが、それ以外のボールは全て質も高く、あらゆるパターンで打ちとれるのは大きな長所だ。

 フォームもギリギリまで体の正面が三塁側を向いており、鋭く体を回転させることができ、躍動感も申し分ない。この春もチームは優勝を逃したが、林自身は7試合に登板して3勝0敗、防御率0.88という見事な成績を残した。開幕戦も複数球団のスカウト幹部が訪れており、5月13日の京都産業大戦も地元阪神が4人体制で視察するなど確実に評価は高くなっているように感じられる。関西の大学生は金丸だけではない。そんなことを強く訴えるこの春の林のピッチングだった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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