秋田・田口選手が振り返る2度の被災経験 支援活動の継続と自らのプレーで「笑顔、希望」を
2018年6月に宮城県名取市閖上で開催した選手会活動 【(C)B.LEAGUE】
実は家のすぐ近くが川で、その川が最初に氾濫したんです。その直前に、高台に住んでいる知り合いが「今のうちに避難したほうがいい」と話をしてくれていました。「ちょっと様子を見る」と返事をしたのですが、あっという間に危険な状態になって……。急いで荷物を1階から2階に寄せて、車に大事なものを載せて、その方の家に避難しました。
家を建ててすぐだったので「マジか」と思いながら、本当に祈りながら、(知り合いの家で)一夜を過ごさせてもらいました。翌朝に戻って、恐る恐る扉を開けたら、床下だけで済んでいました。ただ本当にぎりぎりで、近所には床上浸水した家もかなりありました。
――田口選手ご自身がそういう状況とは知りませんでした。
もう、びっくりしました。家を建てるときも「大丈夫ですよ」みたいな感じで言われていましたし、雪はあっても大雨が降るなんて思ってもいなかったですから。
――水害を経験して気付いたことはありますか?
まず「避難を早めにしたほうが良い」ということです。道路も冠水していましたから、もう少し遅かったら自動車で避難できませんでした。たまたま車高が高い車種なので行けましたが、他の車は何台も放置されていました。なので「声がかかったら、すぐ行動した方がいい」と皆さんにお伝えしたいです。
あと「大丈夫」という言葉はあまり信じ過ぎず、用意はしておいたほうがいいですよね。「何かがあってからでは遅い」と、昨年の雨で強く感じました。
――「ヤフー防災模試」などで知識をバージョンアップする、事前に備ることも大事ですね。
秋田県は災害があまりない土地らしくて、保険に入らない、特に水害の保険に入らない人がほとんどだったらしいんです。それでもああいうことが起こりましたから。
――昨夏の水害はシーズンオフだったと思いますが、クラブでは何か活動をされましたか?
被害が一番大きかった地域、人手が足りない場所にボランティアで行きました。五城目にはチーム全員で行きましたし、二手に分かれて行った場所もあります。水でやられた冷蔵庫やピアノ、畳のような重いものを運び出すお手伝いをしました。帰るときはもう泣きながら感謝してもらいましたし、スイカもご馳走になったりして、「力になれたな」という実感が湧きました。
秋田市でボランティアに参加する田口選手 【(C)AKITA NORTHERN HAPPINETS】
選手会としてはB.Hopeとも連携をして、今まで行ってきた活動の継続がまず大切だと思います。「笑顔、希望を届ける」というのはベタな言葉ですけども、選手自身が何か感じることはきっとありますし、これからの行動につながることもあります。選手会として、より多くの選手に来てもらえる声掛けをしたいなとも考えています。個人としては引き続き、自分にできることがあれば、積極的に協力しつつ、やはりバスケットボール選手なので、プレーで田口成浩を全国に知ってもらえるようにやることが僕の役割なのかなと考えています。
【(C)B.LEAGUE】
我々が深刻な自然災害に対して取り得る行動があるとするなら、「復興への協力」と「災害への準備」だろう。田口成浩選手はプロバスケットボール選手として、選手会の会長として実際に被災地への支援活動に協力してきた。さらに今回は「そなえてバスケ杯」におけるファン防災アクション(「ヤフー防災試験」を活用)を一つの契機として自身の知識不足に気づき、学習の必要性を語ってくれた。東日本大震災、秋田市の水害で被災者の立場を経験した彼だからこそ、その切実性をより強く感じている様子だった。
自然災害を経験せず、平和な人生を送れるならば、それに越したことはない。しかしこの国で暮らすのならば「起こるかも」という心の準備と学習が必要だ。田口選手のインタビューが、皆さんの防災意識の向上につながることを切に願ってやまない。
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優勝:千葉ジェッツ
準優勝:宇都宮ブレックス
特別賞:富山グラウジーズ
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優勝:福島ファイヤーボンズ
準優勝:バンビシャス奈良
特別賞:熊本ヴォルターズ
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【(C)B.LEAGUE】