見応えがあった大谷翔平と今永昇太の初対決 今永を完勝に導いた、注目すべき“球質”とは?
注目すべき今永の4シームの回転効率
大谷を空振り三振に仕留めた今永の4シーム 【Photo by Michael Reaves/Getty Images】
たしかに、今永の4シームの平均回転数は2試合を終えて2404回転(分)。今年のリーグ平均は2282回転。100回転以上も上回っているが、注目すべきはむしろ回転効率である。
回転がいかに無駄なくその球に伝わっているかを示す数値だが、進行方向に対して回転軸が直角で、きれいなバックスピンがかかっているとしたら100%。進行方向と回転軸が一致している場合は0%。0%の場合はジャイロボールということになるので、回転効率は“ジャイロ成分”という言い方もするが、いくら回転数が高くても、回転効率が低ければ、それが縦の変化量に寄与する割合は低くなるのだ。
つまり、変化量に触れる場合、回転数は回転効率とセットで見なければ、あまり意味はない。さらに言えば、縫い目も関係してくる。今永の縦の変化量の平均は47.5cm。MLB平均は41cm前後だが、その6.5cmの差は、決して回転数だけで語れるものではない。
で、今永の回転効率だが、4月1日のメジャー初登板時は97.9%だった。その数字を伝えると今永は、「100%を目指してるんで」と不満顔。MLB平均は90%を下回るので、97.9%も滅多にお目にかかれない数字ではあるのだが、7日の試合はどうだったかといえば、翌日に公表されたデータから計算すると99%だった。大谷のバットが下をくぐるわけである。
2打席目は、いずれも高めの4シームで攻め、2球目の内角高めを打ち上げた大谷の打球は三邪飛だった。大谷としては捉えたと思ったかもしれないが、イメージよりも軌道は上を通過したのではないか。
「とにかく質のいい直球をどれだけ投げ込めるか」と今永。
「そこが、最後に打者を上回るかどうかの違い。自分がいま出せる最善策を選択して、後はどうなるか。きょうは質のいい直球を投げられた」
初対決は完勝だった。
大谷と今永の初対決は、後者に軍配が上がった 【Photo by Michael Reaves/Getty Images】
要は、投球データが平均値から離れていれば離れているほど、打者には見慣れないやっかいな軌道となり、効果的。今永の4シームは空振りも取れるが、フライが多くなり、本塁打もリスクも高まる。そこは紙一重だ。
いずれにしても、今永も覚悟して大谷に対して腕を打った。大谷もフルスイングで応えた。だからあの1球は、見るものの心を捉えた。