井口資仁『井口ビジョン』

世界を肌で感じた井口資仁が思う日本球界の未来 後輩たちへのアドバイスと日本が果たす役割とは

井口資仁
 高校では甲子園出場、大学では三冠王と本塁打新記録。

 プロ野球では日本一、メジャーリーグでは世界一を経験し、ロッテ監督時代は佐々木朗希らを育てた。

 輝かしい経歴の裏には、確固たる信念、明確なビジョンがあった。ユニフォームを脱いで初の著書で赤裸々に綴る。

 井口資仁著『井口ビジョン』から、一部抜粋して公開します。

野球をより魅力あるスポーツとするために

【写真は共同】

 地域貢献という観点に立つと、2023年3月に開場したエスコンフィールドHOKKAIDOがこれからの球場の在り方を示しているように感じます。日本ハムの新たな本拠地は、球場にホテルやショップ、レストラン、マンションなどが隣接する「北海道ボールパークFビレッジ」と呼ばれる大型複合施設。野球の試合がない時でも人が集まって賑わうような、地域の日常に溶け込む場所を目指したボールパークは、これまで日本にはない形でした。

 メジャーではこうした複合施設となっているボールパークが多く、トロント・ブルージェイズの本拠地ロジャース・センターは開閉式のドーム球場ですが、ホテルと合体した非常に珍しい造りになっています。外野スタンドの一部が客室となっていて、ホテルの宿泊客は自室から試合を観戦できるのです。

 ご存じの通り、ロッテの本拠地ZOZOマリンスタジアムは老朽化が進み、たびたび建て替えの話が出ています。そこでロジャース・センターのように外野でロッテホテルと合体する球場を作ったら面白いと思い、球団に提案をしていたのですが、残念ながら採用には至りませんでした。

 アメリカと同様に、日本球界は今、過渡期を迎えています。プロ野球界で発生している新たな動きに合わせ、新ルールの導入や改善についても柔軟に対応していくことを期待しています。プロが先導しなければ、アマチュアはもちろん育成年代まで世界に後れをとることになりかねません。野球をより魅力あるスポーツとして未来につなぐためにも、変化を恐れず、挑戦し続けていきたいものです。

メジャーを目指す後輩たちへのアドバイス

 1995年に野茂英雄さんがドジャースに移籍して以来、数多くの日本人選手が海を渡り、メジャーに新天地を求めてきました。野茂さんの移籍から30年目を迎える2024年も、3年連続で沢村賞に輝き、押しも押されもせぬ日本のエースとなった山本由伸投手、第5回WBC優勝メンバーでもある左腕・今永昇太投手らが、アメリカで新たな一歩を踏み出します。

 僕もまたメジャーで4シーズンを過ごしました。先にも触れた通り、移籍1年目で世界一の歓喜を味わった他、突如トレードを言い渡されたり、控えに回ったり、戦力外となったり、日本にいれば経験しなかったであろう悔しさを知った期間でもありました。ですが、メジャー移籍したことに後悔はありませんし、むしろ自分の世界に幅と深みを与えてくれた貴重な時間になったと感謝しています。

 よく「経験者として、メジャーを目指す後輩たちにアドバイスをください」と言われることがありますが、僕からのアドバイスは一つ。環境が許すのであれば、自分が掲げた夢や目標に挑戦してください。人生は一度きりですし、他の誰でもない自分のものです。後悔のない選択をしてほしいと思います。ただし、生半可な世界ではありません。いいことも悪いことも、うれしいことも悔しいことも、すべて貴重な経験として受け入れる覚悟は忘れずに持ちましょう。野球選手としてはもちろん人としても、失敗を恐れていては成長はできません。

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