井口が現役引退まで貫いた「チームのために戦う姿勢」 引退試合では野球の神様から届いた労いも
プロ野球では日本一、メジャーリーグでは世界一を経験し、ロッテ監督時代は佐々木朗希らを育てた。
輝かしい経歴の裏には、確固たる信念、明確なビジョンがあった。ユニフォームを脱いで初の著書で赤裸々に綴る。
井口資仁著『井口ビジョン』から、一部抜粋して公開します。
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史上最大の下剋上
【写真は共同】
新体制となったチームは、開幕前の下馬評に反して好スタートを切りました。交流戦を迎える頃には怪我人が続出して勢いは半減しましたが、ペナントレースはなんとか3位に滑り込んでクライマックスシリーズ(CS)に進出。すると、ここから快進撃が始まったのです。
ファーストステージは西武を2連勝で撃破。ファイナルステージではソフトバンクを相手にアドバンテージを含む1勝3敗と追い詰められるも、第4戦から3連勝で逆転勝利。日本シリーズでは中日を4勝2敗1分で下し、5年ぶり3度目の日本一となったのです。2007年にCSが始まってから3位のチームが日本一になったのは初めてのこと。「史上最大の下剋上」は大フィーバーとなりました。
この時、負けたら終わりという短期決戦で、チームが見せた集中力の高さは凄まじいものがありました。2005年に2位から日本一になったこともあり、「ロッテ=下剋上」というイメージが浸透。チーム内でも「俺たちには下剋上がある」という雰囲気が生まれました。後ほど詳しくお話ししますが、僕はこの「下剋上」という言葉が好きではありません。はっきり言えば嫌いです。下剋上があるという、どこか心の保険にも似た思いが、この後にチームが低迷する最大の理由だったと思うからです。
下剋上から一転、翌年はリーグ最下位に終わったチームは、そこから試練の時を迎えます。2013年には西武の黄金期を支えた名捕手、伊東勤さんが新監督に就任。たびたびCSに駒を進めるものの、リーグ3位の壁は破れませんでした。