センバツで評価を上げた投手10選 ドラ1候補に躍り出た報徳学園・今朝丸が筆頭格

西尾典文

関浩一郎(青森山田/3年)

同じ右腕の櫻田とダブルエースを形成。先発にロングリリーフにと奮闘し、青森山田にとってセンバツでは初となる8強入りに貢献した 【写真は共同】

 昨年秋までは素材は良いものの少し時間がかかりそうな印象だったが、この冬の間に力強さが増し、完全にドラフト候補という立ち位置に浮上したと言える。

 187センチの長身でありながら体の使い方が上手く、フォームに悪い癖がないのが大きな長所。1回戦では先発として試合を作り、リリーフで登板した2回戦ではギアを上げて以前より出力がアップしたこともしっかりアピールした。プロが高校生に求めるスケール感と将来性を高いレベルで兼ね備えており、夏までに150キロを超えてくればドラフト上位指名の可能性もありそうだ。

伊東尚輝(愛工大名電/3年)

初戦で報徳学園の今朝丸と投げ合い、タイブレークの末に惜しくも敗れたが、9回まで自責点0。全国の舞台で実力をアピールした 【写真は共同】

 入学当初から大器と評判だった大型右腕。昨年は伸び悩んでいるように見えたが、今大会で改めてポテンシャルの高さを示し、再びドラフト戦線へと浮上してきた印象を受ける。

 少し重心が上下動するのは気になるが、テイクバックをやや小さくしたことでリリースが安定し、140キロ台中盤のストレートがコーナーに決まるようになった。スライダーもストレートと変わらない軌道から変化し、空振りが奪えるボールだ。ここからさらに出力を上げて、スライダー以外の変化球がレベルアップすれば、高校からのプロ入りも見えてくるだろう。

佐藤龍月(健大高崎/2年)

指のマメを潰した影響で準決勝に続いて決勝でもリリーフに回ったが、9回に登板すると気迫の投球で1点のリードを守り切り胴上げ投手に 【写真は共同】

 5試合、22回を投げて失点0、22奪三振という見事な投球でチームを初優勝に導いた。

 173センチと投手としては小柄で、右足をかなりクロスに踏み出すフォームは気になるが、鋭く変化するスライダーとチェンジアップのコンビネーションは高校生離れしたものがある。走者を背負っても慌てることなく、落ち着いて相手を見ながら投げられるというのも大きな長所だ。秋に比べると少しストレートの勢いがなく、技巧色が強くなった印象で、来年のプロ入りを見据えると出力をどれだけ上げられるかが重要なポイントとなりそうだ。

石垣元気(健大高崎/2年)

準決勝、決勝で先発のマウンドを託され、特に日本一をかけた報徳学園戦での粘投が印象深い。初回に2点を失ったものの、その後は8回まで得点を許さなかった 【写真は共同】

 佐藤龍月との二枚看板で、準決勝、決勝は先発でも好投。球場表示では大会最速となる150キロもマークし、一躍来年の目玉候補へと浮上した印象を受ける。

 姿勢が良く、177センチというプロフィールよりも大きく見え、豪快な腕の振りが大きな特長。昨年秋はただ速いだけという感が強かったが、この春はスライダーなど変化球もしっかりレベルアップして投球の幅が広がった。まだ全体的に粗削りながら、2年春ということを考えると十分な完成度もあり、今後の成長が楽しみな本格派右腕である。

森陽樹(大阪桐蔭/2年)

早くから話題を集めていた大器は神村学園との2回戦で甲子園デビュー。登板機会はこの試合だけにとどまったが、豊かな才能を感じさせた 【写真は共同】

 2回戦で先発を任され、4回1失点で降板。結果としては可もなく不可もなくという甲子園デビューとなったが、それでも高いポテンシャルの片鱗は見せた。

 先輩の平嶋桂知と比べて全身を使ってゆったりと腕を振ることができており、指にかかった時のボールの勢いは目を見張るものがある。変化球も鋭く落ちるフォークはブレーキ抜群で、決め球として使える威力があった。まだ長身を持て余している印象だけに、ここからスケール感を残したまま、どうやって完成度を高めていくか。引き続き注目したい。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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