プロ野球12球団戦力分析(2024)

巨人は投打にトップクラスの陣容を誇る 課題だったリリーフ陣、大幅なてこ入れは実るか?

データスタジアム株式会社

ベストナイン・大城卓三を中心とした鉄壁キャッチャー陣

巨人野手:2023年ポジション別得点貢献度 【データスタジアム株式会社】

 昨季は正捕手の大城卓が134試合に出場して打率.281、16本塁打といずれもキャリアハイの成績をマーク。攻撃面で他球団に大きな差をつけたことに加え、守備でも盗塁阻止率.373を記録したこともあり、捕手はリーグトップの得点貢献度をマークした。また、今回使用した評価の項目には含んでいないものの、大城卓はストライクゾーンの際どい投球に対するフレーミングのスキルでも優れているのが特徴だ。阿部慎之助監督の現役時代ほどの存在感はないかもしれないが、現代のNPBでは攻守両面でトップクラスの活躍を見せているキャッチャーである。

 2番手以降も岸田行倫が捕手としては優れた打撃成績を残しており、若手の山瀬慎之助も二軍で好成績を残している。キャッチャー陣はバックアップの層も厚いのが特徴で、もしも大城卓にアクシデントがあったとしても、大きな痛手となる可能性は低い状況だ。

一時代を築いた坂本勇人が本格コンバート

長らくショートを務めた坂本が、今季から本格的に三塁へ転向。内野の顔ぶれが変わり、ポジションごとの数値にも変化が起こりそうだ 【写真は共同】

 昨季は岡本和真がリーグトップのOPS.958をマークし、坂本が同3位のOPS.884を記録。両者が主に守った三塁と遊撃はそれぞれリーグトップの得点貢献度を記録するなど、内野4ポジションすべてでリーグ平均を上回り、合計値でも阪神に次ぐ数値を残していた。そうした中、今季は内野のレギュラーが本格的にコンバートされ、ポジションごとの収支は変わるだろう。オフに一塁手の中田翔が退団したことや、昨季途中にルーキーの門脇誠が頭角を現したことで、一塁は岡本和、二塁は吉川尚輝、三塁は坂本、ショートは門脇がレギュラーとなる見込みだ。門脇は昨季オールスター以降、打率.320、OPS.778とショートとしては優秀な打力を見せ、守備でもリーグ上位の得点貢献度を記録した。レギュラー陣が離脱することなくシーズンを通して出場できれば、今季も12球団トップクラスの内野陣となるだろう。

 懸念材料を挙げるとすれば、内野の選手層が充実しているとはいえないため、レギュラーとバックアップの選手との間に大きな実力差がある点だろうか。そのリスクに対しては、オフに新外国人のオドーア、ドラフトで社会人出身の泉口友汰を補強して、選手層の強化を図っている。

本命のレギュラーは不在の外野手。センターは若手による激しい競争

 昨季は前年にチームトップクラスの活躍を見せた丸佳浩が不調に陥ったこともあり、規定打席に到達した外野手はゼロ。不動のレギュラー選手はいなかったが、選手層の厚さを生かして両翼ではリーグ平均以上の得点貢献度を記録した。21歳の秋広優人が打率.273、10本塁打とブレークを果たしたほか、ベテランの長野久義や梶谷隆幸が一定の活躍を見せた。オフにはメジャーで通算178本塁打の実績を持つオドーアが加入し、ライトのレギュラーとして期待がかかる。ただ、ライトは丸が不調だったとはいえ、攻守で優れた成績を残していたポジションだ。丸を含めた他の外野手が活躍するようであれば、オドーアは本職のセカンドで起用した方がチームにとって有益となる可能性もある。オドーアが内外野で起用できる状況を踏まえると、今季も外野手は昨年同様に流動的な起用となるだろう。特にセンターは、昨季まずまずの活躍を見せたブリンソンが退団し、激しいポジション争いが繰り広げられている。

※編集注:オドーアは掲載後の26日に退団が発表された。

 オープン戦では、即戦力ルーキーの佐々木俊輔や、近年は不振に苦しんだ松原聖弥が好成績を残している。両翼のポジションは充実しているため、センターは若手選手を我慢して起用しやすい環境となっている。

就任1年目の阿部監督、戦力は整いつつある

 球団創設90周年を迎える巨人。2年連続Bクラスと低迷しているものの、投打にリーグトップクラスの選手が複数在籍し、飛躍が期待される若手も多い。このオフには最大の弱点だったリリーフ陣に大幅な補強を加え、今季は戦力が整いつつある。就任1年目の阿部監督は、投手陣に与四球の削減を求めてストライクゾーンで勝負する方針や、野手陣には自己犠牲のチームバッティングを重視するなど、チームの改革を推し進めている。昨季のセ・リーグでは、阪神が就任1年目の岡田彰布監督のもとリーグ優勝を成し遂げた。2度目の就任だった岡田監督と違い、阿部監督に関しては文字通りの新指揮官となるが、充実した戦力を巧みに操って4年ぶりのリーグ制覇に導けるか。

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