釜山大会、そしてパリ五輪へ 未来の卓球界を担う新世代プレーヤーたち
この2年ほどで急激な成長を見せるルブラン兄弟。フェリックス(右)は希少なペンホルダー使用者 【写真:REX/アフロ】
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兄弟、メガネ、サービス、ラケット…フランスの兄弟選手はパリ五輪のスター候補
まず、この2年間ほどで大きく成長し、世界トップランカーとなったのがフランスのルブラン兄弟。この夏、パリ五輪開催を控えるフランスにとって、卓球競技24年ぶりのメダル獲得の期待がかかるスター候補だ。兄のアレクシスは20歳、弟のフェリックスは17歳とまだまだ若く、トレードマークは兄弟揃ってのメガネ。卓球に限らず、スポーツ全般において「メガネのトッププレーヤー」は少数かもしれないが、兄弟揃ってメガネを着用して世界トップに上り詰めた珍しいケースでもある。
兄のアレクシスはパワーがウリで、少々強引に見えても常に攻めて攻めて攻めまくるスタイル。また、トリッキーなプレーも織り交ぜてくるため、相手としては予測や対策が立てにくい。サービスも多彩で、次から次へと様々な種類のサービスを繰り出し、相手を混乱させていくのも特徴。そのうえ、今まで見たこともないような、個性的なフォームや自由な発想でサービスを繰り出す。
17歳にして世界ランキング6位の弟・フェリックスはまだ体の線は細いが、長身でセンスを感じさせるプレーヤーで、アレクシスと同様に多彩なサービスを操る。また、フェリックスは世界トップでは少数派のペンホルダーラケットの使い手。ペンホルダーは世界的に見ても中国や日本、韓国、香港、タイペイといった東アジアの選手が使っているケースがほとんどで、ヨーロッパの選手が使用するケースはほとんどない。
フェリックスは地元のクラブにペンホルダーの中国選手が所属しており、その選手に憧れて幼少期からペンホルダーを使用するようになったとのこと。また、ルブラン兄弟とともに東京五輪後にブレイクした選手の1人であり、ドイツのエースとして今大会にも出場している世界ランキング10位のチウ・ダンもペンホルダー。ドイツ生まれの中国系プレーヤーで、水谷隼や石川佳純のコーチも務めた世界的な名伯楽の邱建新を父に持ち、ペンホルダーだった父の影響でペンホルダーを使用。現在主流のシェークハンドラケットに比べて「不利な面が多い」と考えられ、「本家」の東アジアでも少数派になったペンホルダーを使い、ヨーロッパから世界トップランカーが2人も登場している。
「北欧のバイキング」の系譜を継ぐ独創的プレーヤー
プレーもパフォーマンスもスター性を感じさせるモーレゴード。ラケット形状も注目 【Photo by VCG/VCG via Getty Images】
モーレゴードは15歳で出場した世界ジュニア選手権で中国勢を次々に破って準優勝。当時から型にはまらない独創的なプレーと類まれなボールセンスで注目を集めた。現在の世界トップの主流技術であるドライブの他、横殴りにボールを叩くように打つカウンターも駆使。レシーブではチキータを多用せず、ツッツキやストップ、フリックなど、2010年代以前に主流だったクラシカルなテクニックが中心。しかし、現在の主流でない技術だからこそ、相手は対策練習に時間を割くことも少なく、効果を発揮する。
片膝を地面につき、右手を額につけるポーズも勝利後のお決まり。ラケットも一般的な楕円形のブレードではなく『サイバーシェイプ』と呼ばれる六角形のブレード形状のものを使用。発売直後の『サイバーシェイプ』を使用して2021年世界選手権に挑んだが、モーレゴードの準優勝という結果により、六角形のブレードが「ただのイロモノではない」と認知され、使用者が増えていった。
スウェーデンは当時世界の頂点に君臨していた中国を破って世界選手権団体戦3連覇を達成するなど、1980年代後半から2000年代前半にかけて黄金時代を築いた「北欧のバイキング」。世界選手権シングルスで3度頂点に立ち、バルセロナ五輪でも金メダルを獲得した「キング」ことワルドナーを筆頭に創造的で個性的なプレーを見せる選手を次々に輩出してきたが、モーレゴードもその系譜にあたる、観る者をワクワクさせてくれるプレーヤーだ。