ファンクラブ会員3倍増、最多観客記録の「1万人企画」 参入2年目の東京GBがバレー・Vリーグで見せる“ハッピーな”ファン戦略
選手自身が観客動員に励む理由
選手も会場やSNSで積極的に来場を呼びかけている 【写真:東京グレートベアーズ】
「少し前のバレー界とは違う文化がすごくある気がしています。“推し活”として楽しんでいるファンが多いのかな、と」(原口氏)
3月2、3日、有明コロシアムで行われる日本製鉄堺ブレイザーズ戦で再び実施する「10,000人プロジェクト」では、推し活を楽しむファンへの仕掛けがさまざまにある。
最たる取り組みが、営業サイドだけでなく、選手たちも来場を呼びかけていることだ。
「3月2日と3日に10,000人プロジェクトをやるので、みんな、絶対友だちを連れてきてください!」
ホームゲームの会場では、選手たちがコート上から声をかける。“推し”からの直接のお願いは、ファンにとって何より響くものだ。
選手たちが“自分ごと”として営業に励むのは、クラブで普段から行なっている意識づけが大きい。プロスポーツ業界はどのように成り立っているか、久保田健司代表取締役が定期的に説明しているのだ。
加えて、現在チケットがどれくらい売れているかをグループLINEでこまめに共有し、「今、〇〇%です。もっとお声掛けをしましょう!」と伝えている。ファンが増えれば、最も夢を見られるのは選手自身だ。
「会場の盛り上がりに心を打たれました。こういう雰囲気でプレーしたいとずっと思ってたので」
そう言って今季開幕前に加入したのが、昨年の「10,000人プロジェクト」で対戦相手だった柳田将洋だ。海外でプロとして活躍し、日本代表の主将も務めた柳田は「プロのアスリートはこうあるべき」と示し、チームビルディングにも好影響が表れていると宮原氏は語る。
「こんなチャンスは2度とない」
2月7日のホームゲームには新日本プロレスの棚橋弘至選手がゲストで来場 【写真:東京グレートベアーズ】
運営費をただかけるだけでなく、知恵を絞り、汗を流すことで、Vリーグでもトップクラスのファンを獲得しているのだ。
バレーボールドリームの実現へ――。
宮原氏は、今以上のチャンスはないと意気込んでいる。
「会場に来てくれた人はみんな『面白い』と言ってくれるし、競技のポテンシャルはすごくあると思います。今の日本男子代表は歴代最強で、来シーズンにはSVリーグが始まる。プロチームが東京にできた。こんなチャンスは2度とないので、逃すわけにはいきません」
Vリーグは2024年秋に再編成し、競技力だけでなく組織力や事業力でも基準を満たしたチームに参入を認めてSVリーグを発足させる。現在ホームゲームは年間9節(18試合)だが、SVリーグでは11節(22試合)が想定され、ビジネスチャンスは拡大する(※リーグ全体は22節、ホーム&アウェイで全44試合の予定)。
東京GBは上昇気流に乗り、どこまで羽ばたけるか。バレーボール界の取り組みとしてだけでなく、スポーツビジネスの観点でも、その行方が楽しみだ。