カーリング日本選手権で42連敗中のあの地域 その現状を打破するために南の島で行われているコト

竹田聡一郎

梅田にフォルティウス、沖縄にはロコ・ソラーレ

大阪のイベントにはフォルティウスから近江谷杏菜らが参加する 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 それでも普及や周知という面では前向きな話題が聞こえてくる。

 西日本最大の繁華街のひとつである梅田の駅の北側、「うめきた広場 グランフロント大阪」では毎冬、MBS毎日放送主催の「ウメダアイスリンク つるんつるん」が設置され、今年で10年目を迎える。

 ここでは大阪カーリングクラブが主導する体験会などが行われ、昨年はフォルティウスの近江谷杏菜がゲスト参加。今年も2月12日に近江谷、小谷優奈、小林未奈のフォルティウス3選手が来阪する(参加募集は終了)予定でカーリングイベントの規模は広がっている。この3選手の所属企業の加茂川啓明電機の本社は大阪府吹田市だが、他の関西の企業にもカーリングに興味を持ってもらうきっかけとしても働いてくれるかもしれない。

 そして、なんといっても沖縄での芽吹きが興味深い。

 昨年6月24日、沖縄県南風原町のエナジックスポーツワールドサザンヒルでのイベント「ロコ・ソラーレとエンジョイカーリング」が開催された。小学生から70代まで県内外から約60人のファンが参加。翌朝の琉球新報は「南の島でカーリング」の見出しを1面に打ち、県内初のカーリング体験会の様子を伝えるなど、関心の高さと話題性の大きさがうかがえた。

「カーリング界にとっても本当に大きな一歩だと思いますし、その場にいさせてもらって嬉しかった。選手として結果を出しながら、西日本でもカーリングができるように普及の手伝いをしてもっともっと盛り上げたい」とは藤澤五月のコメントだ。

ロコソラーレの藤澤五月は沖縄で普及活動に参加した 【写真は共同】

 活動実績をはじめとした諸条件の整備がこれからなので、現在は日本カーリング協会の認める正式な加入団体ではないが、沖縄カーリング協会も既に発足。前述した昨年12月の西日本選手権には男子チームの「チーム沖縄」が近隣の熊本県カーリング協会から派遣される形で出場を果たしている。

「沖縄でカーリング。そのフレーズだけでワクワクしますし、夢がありますよね。ぜひみなさん、注目してください」と声を弾ませるのは、未登録団体ながらも沖縄カーリング協会の津留豊(つる・ゆたか)会長だ。福岡出身で元フィギュアスケートの日本代表という経歴を持つ津留さんの野望は沖縄代表のカーリングチームを日本選手権に送り込むこと。漫画『南風原カーリングストーンズ』(小学館/なかいま強)を地でいく青写真だ。前述の「ロコ・ソラーレとエンジョイカーリング」ではなかいま先生も登場し「ロコのみなさんが沖縄に来てくれるなんて感無量です」と目を潤ませていた。

 現在もエナジックスポーツワールドサザンヒルでは体験会および練習会が継続的に行われており、内地、信越や北陸でカーリングを経験した選手が指導するなど、少しずつだが、南の島でカーリングが「観るスポーツ」から「やるスポーツ」への可能性が出てきた。早ければ来季、再来季あたりには、京都、岡山、広島、島根、愛媛、福岡、熊本に続く西日本8つ目、日本で25団体目のカーリング協会が正式に誕生するかもしれない。西日本のカーリングのなによりのカンフル剤になるだろう。

「全国、特に西日本でカーリングができれば、カーリング全体がもっと盛り上がっていくと思います」とは藤澤五月、「47都道府県でカーリングができるようになる。長い道のりかもしれませんが、それは私の目標のひとつです」とはフォルティウスの近江谷杏菜。トップ選手がそう語るように、西日本のカーリングの普及発展は、カーリング界の命題であり、鉱脈そのものだ。広く議論され、可能性を探っていくべきだ。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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