第2期森保ジャパンはなぜ強い? ペルー戦で物議を醸したスタイル、ドイツ戦で向上した数値、チュニジア戦での新たな試み…
パス成功率が70%から86%へと向上
ドイツ相手に果敢にディフェンスラインを押し上げた日本代表。ハイラインを敷くうえで、冨安の復活は大きい 【Photo by Boris Streubel/Getty Images】
ドイツを相手にハイラインのプレッシングを仕掛け、自分たちもボールを保持する姿勢を見せた日本代表でしたが、前半に勝ち越しに成功すると、後半は5バックに変更して耐え忍ぶ形を選択します。
カタールW杯のリピートのようで、そうでないことを最も表しているデータはパス成功率でしょうか。W杯のドイツ戦におけるボール支配率は26%、パス成功率が70%だったのに対し、9月のドイツ戦ではボール保持率が32%、パス成功率は83%だったのです。まさに伸びしろでしたね。
このドイツ戦は第2期を理解するうえで象徴的な試合となりました。ハイラインを可能とするセンターバックの台頭、ハイラインが可能とするプレッシングの連動は第1期から続いているプレッシングの強度、連動をさらに高めることに成功しています。
また、パス成功率を高めることで目指すのは「ボール保持によって試合の主導権を握る」ことではなく、「相手のターンが延々と続くような試合にするのではなく、自分たちのターンも作れるようにボールを保持できるようになろう!」ということです。
最悪でも40%はボールを保持したい、そのためには自分たちの時間帯を作る必要があり、それが可能かどうかを表す一つのデータがパス成功率だということがドイツ戦からは窺えるのです。
ドイツ戦後の日本代表は、さらなるラージグループの形成を目指し、新戦力を試す機会が増えました。そうした中で序列をひっくり返すことに成功したのが久保です。本当は右サイドで台頭する予定だったのかもしれませんが、右サイドの伊東純也が衰え知らずなのは嬉しい誤算でしょうか。9月12日のトルコ戦ではすべての攻撃がトップ下の久保から始まっていたと言っても過言ではありませんでした。
チュニジア戦で見せたブライトン式ビルドアップ
高いボール奪取力を武器に“新戦力”としてアジアカップに参加するMF佐野。新たな発見を森保ジャパンにもたらせるか 【Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images】
11月の北中米W杯アジア1次予選では大胆なターンオーバーを実行し、ミャンマーとシリアを下すことに成功しました。最終予選でも同じようにターンオーバーできるかどうかは定かではありませんが、W杯を勝ち抜くためにラージグループの教科が必要だという森保監督の強い意志が感じられます。
元日に行われたタイ戦では日本代表の原点であるプレッシングとショートカウンターを軸に試合を進めながらも、後半に登場したお馴染みの面子(堂安律、中村敬斗、南野拓実ら)がプレー精度の高さとボール保持での引き出しの多さを見せることに成功し、アジアカップに向けて盤石であることを証明しました。
アジアカップでは相手を押し込んだ状態になる試合が多くなることが予想されます。つまり、撤退守備を実行する相手をどのように崩すかが鍵となります。重要なのはスタートの配置というより、選手個々に与えられる役割や選手の組み合わせであり、そこでハズレを引かないことが大切になってきています。
ただし、うまくいかない場合における話し合いによる試合中の修正もお手のものとなってきているので、アジアカップでは試合中の変化にも注目すると楽しめるかもしれません。
ひとりごと
そういう意味ではボール保持にこだわりがない一方で、相手がボールを持たせてくれるなら、それはそれで構わないという柔軟性も今の日本代表は備えています。どちらの局面で試合を進めたら効率がいいか、試合中にどの表情を見せるべきか、という点においては、W杯前から選出されている常連組のほうに一日の長があります。
アジアカップで森保監督がどこまでターンオーバーをするのかも注目ですし、ターンオーバーをどのような選手構成で行うのかも楽しみですが、新戦力多めのメンバーの場合、どこまで機能させられるかは注目でしょう。
最強メンバーのできることを増やす・完成度を高めることよりも、ラージグループの形成を優先してきた森保体制第2期の日本代表が、その成果が問われるアジアカップでどのように振る舞うかは非常に楽しみです。
(企画・編集/YOJI-GEN)