慶應義塾・丸田湊斗が語る「甲子園と人生」 中学でやめるはずだった野球でつかんだ日本一
中学時代に憧れていた「かるたの甲子園」
U-18では日本のW杯初優勝にも貢献。もし高校で野球をしていなかったら、かるたの世界で“甲子園”を目指していたかもしれない 【写真は共同】
丸田 軽音楽部でバンドをやってみたり、百人一首が好きなので『かるたの甲子園』を目指してみたり、いろいろやりたいことはありました。
――バンドを組むとしたら、楽器は何を?
丸田 小学校の高学年のときにピアノを習っていたので、そっち系ですかね。
――ピアノは好き?
丸田 好きですね。中学の合唱コンクールでは1年生、2年生のときに、課題曲の伴奏者もやりました。
――すごい。何の曲か覚えていますか?
丸田 中1が『マイバラード』で、中2が『この星に生まれて』です。今は弾く機会はめったにないですけど、back numberやヒゲダン(Official髭男dism)のバラードも練習していました。
――競技かるたはなぜ?
丸田 小さい頃から祖父母と百人一首で遊んでいて、小学校でも中学校でも百人一首を学ぶことがあって、その影響です。
――映画の『ちはやふる』は観ました?
丸田 全部観ました。かっこいいですよね。あと、小学校の低学年まで柔道を習っていたのもあって、畳が好きなんです。「和」って感じがして。
――柔道着も似合いそうですね。ちなみに、百人一首で好きな句はありますか?
丸田 あります。でも、何だったかな。
――ひさかたの……
丸田 光のどけき、春の日に……。
――ちゃんと覚えていますね!
(スマホを見ながら、好きな句を探してもらう)
丸田 あー、この「かささぎの 渡せる橋に」も結構好きでしたけど、一番は「山川に 風のかけたるしがらみは 流れもあへぬ もみぢなりけり」ですかね。さすがに詳しい意味までは覚えてないですけど、情景が浮かぶ句が好きで、小学校で習ったときからずっと印象に残っています。
――柔道の話もありましたけど、小さい頃に習い事をやっていた経験はどう生きていますか。
丸田 そうですね。何に対しても、「やればできる」「何とかなる」みたいなところはあるかもしれません。
4年後のプロ入りを考えるよりも『今を全力で』
夏の甲子園をともに戦ったヒゲダンのタオル。高校生になってから、コンサートにも2回行ったそう。 【筆者撮影】
丸田 ヒゲダンですね。
――迷いなく、やはりそこにきましたね。
丸田 はい。歌も人柄も、もう全部好きです。
――試合前にも聴いていますか?
丸田 聴いていますけど、テンションが上がる洋楽やJ-POPも聴いています。
――あえて、ヒゲダンで好きな1曲を挙げるとしたら。
丸田 『ビンテージ』です。夏の甲子園の大会中、ご飯を食べる前に、順番でスピーチをする時間があるんですけど、ぼくは『ビンテージ』の歌詞を引用しました。「キレイとは傷跡がないことじゃない 傷さえ愛しいというキセキだ」という歌詞が自分は好きで、野球で考えると……、「エラーをしないように」とプレーするよりも、いろんなことに挑戦して、泥臭くやるぐらいのほうが、周りからすると魅力的な選手に見える。そんな話をしました。
――スピーチ力もありそうですね。今日は事前に、「自分を支えてくれた思い出のグッズ」をお願いしていたんですけど、大好きなヒゲダンのタオルですね。
丸田 はい、夏の甲子園でずっと使っていて、力をもらいました。
――最後に、これからについても聞かせてください。U-18のチームメイトの中には、プロの世界に挑戦する選手もいます。慶應大学に進学後、4年後のプロ入りはどこまで具体的にイメージしていますか。
丸田 今の段階では、力が全然足りないと思っています。4年後に、その段階にまで達していたら考えたいです。目標としては、大学の侍ジャパンに選ばれて、U-18のチームメイトともう1回プレーできたら嬉しいです。それでも、自分は先のことを考えるのがあまり得意ではないので、今に集中して頑張りたいです。
――いい考えですね。ここまで、自分を支えてきたような言葉はありますか。
丸田 座右の銘は、『今を全力で』です。中3のときにコロナでの自粛を経験して、「今の環境が当たり前ではない。いつ何かが起きてもおかしくない」と本気で思うようになりました。だから、今を全力で頑張るしかない。
――先のことを考えるのが苦手とのことですが、将来の夢は?
丸田 なりたい職業とかはまだ決まっていないんですけど、普通に幸せな家庭を築きたいです。
――その「普通」が難しいんですけどね。
丸田 今のご時世、それが目標になるような世の中になってきていると思うので。
――なるほど。丸田くんの考える「普通」とは?
丸田 車が好きなので、乗りたい車を買えるぐらいの生活を送りたいです(笑)。