「大谷マニア」のシーズン総括

大谷翔平、メジャー史上初の2度目「満票」MVPなるか MLBの今シーズンMVP予想

丹羽政善

バーランダーは「ア・リーグのMVPは翔平しかいない」と大谷に太鼓判

 一方のア・リーグはもっぱら、大谷一択の様相。ファイナリストは、大谷の他、コーリー・シーガーとマーカス・セミエン(ともにレンジャーズ)。まずは、その3人の数字を列記する。

ア・リーグファイナリスト主要成績

【スポーツナビ】

 大谷は右脇腹痛と右肘の手術によりシーズン最後の25試合を欠場したが、シーガーも出場試合数は119試合にとどまった。セミエンは全試合に出場し、WARではリーグ3位だが、特筆すべきはその程度。全体の成績では、大谷、シーガーに大きく劣る。

 バーランダーは、「もしもシーガーが162試合プレーして、同様の結果を残していれば分からなかった」と口にしたが、それでも、「やはり翔平には敵わなかったのではないか」という。

 もちろん、レンジャーズはポストシーズンへ。エンゼルスは地区4位に低迷。その差はあるが、個人打撃成績のギャップを覆すほどではない。

 大谷の場合、ここに23試合に登板し、10勝5敗、防御率3.14、167奪三振という投手成績が加わる。打撃成績だけでも受賞は確実だが、投手成績を加味すれば、やはり、「ア・リーグのMVPは翔平しかいない」(バーランダー)となるのである。

「今回もおそらく満票で選ばれると思う。もう、これ以上の議論は必要ない」

 ただ、これだけ圧倒的な数字を残してなお、大谷の1年は消化不良気味。バーランダーも「今年は過去2年を上回り、大リーグ史上、個人として過去最高のシーズンになりそうだった」と話す。

「打率は3割を超え。OPSも1.000を突破した。防御率は3点台前半。こんなシーズン、常識では考えられない。間違いなく史上最高のシーズンになったはず。それだけに本当にシーズン終盤の故障は残念だった」

 1921年、ベーブ・ルースは59本塁打を放った。1941年、ジョー・ディマジオは56試合連続安打を記録し、テッド・ウィリアムズは打率.406をマークした。

 最後の25試合を欠場しなければ、いや、1ヶ月近く欠場してこの数字を残したこと自体が驚きだが、完走していた場合、今季の大谷が残したであろうインパクトは、彼らの偉業同様、深くファンの脳裏に刻まれたはず。どこか物足りなさが残ることが逆に、今季のすごさを浮き彫りにする。

 では、最後までプレーしていたら、50本。いや、60本に届いていただろうか。

「50本はいっただろうね。60本は微妙だったかもしれないけど」

 来年は、打者に専念する。その分、打撃成績は上がるのか。最後、そうバーランダーに問うと、苦笑しながら言った。

「たしかにそうだけど、打率3割、OPS1.000超えは簡単じゃない。彼にとってもキャリアハイだから。彼がもしも同じような数字、いや、今年よりもいい数字を残したらすごいけど、どうなるかな。いまここで打率3割3分、60本塁打とはなかなか予想できない。本当にそうなったら信じられない」

 どこでプレーするかにもよるかもしれない。ドジャースへ移籍すれば、ベッツ、フリーマンが前後を固める可能性がある。相手は、大谷から逃げられない。ゾーン内の勝負が増えれば、さらなる上積みがあるかもしれない。 

 なお、今年も満票でMVPに選ばれれば、21年に続いて2度目。これは史上初となる。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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