「神村学園にしかできなかった秋の経験」を日本一の糧に 過酷な日程を乗り越え、一番成長した九州大会にできるか

加来慶祐

出場校一、成長できる九州大会にできるかは「今後次第」

国体でも本塁打を放った正林は、左足の疲労骨折が癒えぬまま全試合で4番を務めた。過酷な日程を乗り越えた経験を、春の頂点に向けた糧とできるか 【写真は共同】

 変則の左投手に対して、打線は10安打を放っている。決して打ちあぐねたわけではないが、あと一本がでなかった。また、秋の鹿児島大会では強打とともにスクイズの仕掛けや送りバントで走者を進める堅実さも光ったが、敗れた熊本国府戦では3回までに2度の送りバント失敗があり、攻撃のリズムをみすみす失った感もある。

「先制後も取れるチャンスはたくさんありましたが、自分たちのスイングをさせてもらえず、フライアウトが多くなってしまいました。完全に打たされましたね」と、相手先発の植田鳳暉(2年)に脱帽。一方で、大会を通じてテーマに掲げたエース左腕・今村の“一本立ち”については、ある程度の目途が立ったようだ。

「まだまだですけど、課題だった立ち上がりが良くなって、変化球でもカウントが取れていましたね。準決勝はグラウンド整備あけの6回に逆転されて6失点しましたが、そこもいい勉強になったと思います。準々決勝までは2試合で12回2/3で1失点。序盤の失点もなく、粘り強く投げられるようになりました」

 選手も、小田監督自身も「日本一」を高らかに宣言しながら、故障者の多さから来る不安もあってか、慎重な姿勢を崩そうとはしなかった。日本一とともに掲げた「出場校一、成長できる九州大会にしよう」という目標は、果たして今大会で達成できたのだろうか?

「今後の結果次第でしょうね。選手たちは7月の鹿児島大会以降、本当に休む間もなくここまで頑張ってくれました。今年は地元国体ということもあって、おそらく全国一きついスケジュールだったかもしれません。ただ、それも今年の神村学園にしか経験できないことですからね。そこを乗り越えて(センバツ切符当確とされる)九州大会の4強まで来れたことは自信にしたいし、チームの力に変えていきたいです」

 今夏の甲子園4強世代は、昨年秋の九州大会初戦で大分商戦に0-10の6回コールド負けを喫したところから超V字回復を果たし、夏の甲子園準決勝までたどり着いた。あの「成長力」を間近で見て、体感してきた世代だけに「春の日本一が獲れるように、全員で、全力で練習していく」という川下晃汰主将(2年)の言葉にも、得も言われぬ説得力が満ち満ちているのだ。

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著者プロフィール

1976年大分県竹田市生まれ。東京での出版社勤務で雑誌編集などを経験した後、フリーランスライターとして独立。2006年から故郷の大分県竹田市に在住し、九州・沖縄を主なフィールドに取材・執筆を続けているスポーツライター。高校野球やドラフト関連を中心とするアマチュア野球、プロ野球を主分野としており、甲子園大会やWBC日本代表や各年代の侍ジャパン、国体、インターハイなどの取材経験がある。2016年に自著「先駆ける者〜九州・沖縄の高校野球 次代を担う8人の指導者〜」(日刊スポーツ出版社)を出版した。

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