けがを押してダンクコンテストに出場したコービー 高校生ながら「ロックスター級」の大歓声を浴びる
満点を狙ったコービーのアイデア
右手ドリブル……まだハーフコート内……。
左手ドリブル……スリーポイントライン内……。
左手ドリブル……ファウルラインに到達……。
コービーはレーンの中で、チームメイトたちにぶつかる寸前に踏み切った。ぶつかる代わりに彼らの上を飛び越え、一切触れることもなく、弱った右手に抱えたボールをバスケットにぶち込んだ。
観客は耳をつんざくような歓声をあげ、一人残らず手を叩き、大声をあげて声援を送りながら、立ち上がったりその場で飛び跳ねていた。コートの真ん中辺りで立っていたアールは、どうしようもないといった様子で両手を上げた。彼とコービーはハーフコートで握手をし、ハグを交わした。コンテストは引き分けという結果に終わったが、勝者が誰なのかは全員がわかっていた。
「まるでロックスターが誕生したようだった」とダウナーは言った。「それは雪だるま式にどんどん大きくなっていったんだ」。
トリートマンとドリュー・ダウナーはスワンプ・フォックス・モーテルまで一緒に歩いて戻りながら、まだにわかに信じられない気持ちでコービーの活躍について語り合った。彼らはコービーのことを四年間知っていたにも関わらず、その晩のようなことは見たことがなかった。このチームにいる選手たちは、これを目の当たりにすることができるという特権を理解していただろうか? 物事に対する視点がもっと備わった大人であるコーチたち自身もちゃんと理解していたのだろうか? 真に理解できていたのだろうか? 家族にはリスクを犯さないよう懇願され、コンベンションセンターの観客の歓声がどんどん大きく騒がしくなる中、コービーは宙を飛び、怪我をした腕でまるでサーカス芸のようなダンクを叩き込んだのだ。これが現在のコービー・ブライアントなら、将来的にはどんな選手になるのだろう?
二人はトリートマンの部屋の前で立ち止まった。
「しかも、彼はここに住んでいる」とトリートマンが言うと、二人は吹き出した。
書籍紹介
本書はNBAレジェンド、コービー・ブライアントがフィラデルフィアで州大会優勝を成し遂げ、レイカーズに入団するまでの軌跡を描いています。コート上の話だけでなく、アメリカの黒人文化や社会構造、また大学リクルートの過程などさまざまな要素が若きコービーに影響を与える様が綿密に描かれているファン必携の一冊です。