日本のディフェンスが“消された”理由 ラグビー元日本代表・藤井淳が解説

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アルゼンチンに敗れ、肩を落とす堀江翔太(左)ら日本代表 【写真:ロイター/アフロ】

 ラグビー日本代表(世界ランキング12位)は8日、ワールドカップ(W杯)フランス大会の第4戦でアルゼンチン代表(同9位)と対戦し、27対39で敗れた。日本は2勝2敗で、2大会連続2回目の決勝トーナメント進出はならなかった。
 トライを奪い合う激戦の中で、勝敗を分けたポイントはどこにあったのか? 元日本代表の藤井淳氏(東芝)に話を聞いた。

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中盤でモールを押されたことがポイントに

――激しい試合になりましたが、今日の試合をどう見ましたか?

 どちらに転ぶかわからない展開もありましたが、総合的には差があったと思います。
 日本はキックオフでのノックオンや、自陣からの脱出がうまくいかずに反則を繰り返してしまい、アルゼンチンが有利に攻撃できる状況になりました。
 特に、中盤のラインアウトからのモールを押されたことで日本は試合の流れを奪われてしまいました。

――ラインアウトモールのディフェンスについてはこの4年間で向上していたようにも感じましたが?

 2019年大会からの4年間でモールディフェンスが強化されたのは間違いありません。特に自陣ゴール前のピンチにおいては選手たちがしっかり固まって、タッチライン際に押し返すなど、ディフェンスのスキルが上がっていました。

 ただ、今回は前半2分にトライを取られたシーンもそうですが、中盤で押されました。「エリア的に押してこないだろう」という考えがあったのかもしれませんし、相手バックスラインの攻撃への警戒心が強すぎたのかもしれません。

 モールは最初に止めればなかなか動かなくなるのですが、最初に動き出すと止めるのが難しくなります。日本はこの対応で後手に回りました。

長くて速いパスで「消された」選手

ラインアウト後の攻防で優位に立ったのはアルゼンチンだった 【写真:ロイター/アフロ】

――中盤でモールを押されることで影響は?

 一度動き出したモールを止めるために、その周辺で相手のライン攻撃に備えていた選手たちがモールディフェンスに入らざるを得なくなります。そうなると、モールからのサイド攻撃の可能性があるので、日本のSO松田力也選手がモールに寄っていきます。
 そのタイミングで長くて速いパスを出されると、テレビ画面上はバックス同士が同じ人数のように見えますが、実際には松田選手が相手の脅威になっておらず、“消されて”しまうのです。

 また、モールを押される間は日本のバックスラインも下がらなければいけません。モールをがっちり止めた状態からボールが出た場合は、日本のディフェンスラインが勢い良く出て、相手にプレッシャーをかけることができます。しかし、モールとともに下がってから前に出るとプレッシャーは弱まってしまいます。

 モールを押されてその周辺の選手が減ったことで、カバーに入った選手が次のパスで消されてしまう。さらに、相手はモールとともに勢い良く前に出てきているのに日本は下がりながら枚数が減らされた状態で守らないといけない……。こうした状況を多く作られたことが、今日の試合のポイントになったと思います。

――結果的にタックルを外されたトライに見えましたが、その前に要因があった訳ですね。

 単純なタックルミスではありません。もちろん、前半2分のトライで言えばCTB中村亮土選手が止めていればナイスディフェンスでしたが、日本屈指のタックラーである中村選手にとっても難しい状況が作られていた訳です。

 アルゼンチンの選手はフィジカルがとても強いので、彼らがボールを持って走る時間を短くする必要がありました。パスでボールが浮いている間にスペースを詰めて、キャッチしたらすぐにタックルに入るイメージです。

 しかし、今日はモールを押されて相手の勢いを加速させてしまったり、キックをクリーンキャッチされて余裕を持った状態でカウンターアタックを仕掛けられました。こうなると日本にとっては厳しくなります。

 もちろん、アルゼンチンの選手のパワー、スキルもレベルが高かったです。3トライを挙げたマテオ・カレーラス選手はものすごいキレとスピードでした。特に後半28分のトライはカットイン、ハンドオフ(タックラーを手で突き放す)のタイミングが完璧で、そのハンドオフの反動で加速してタテに抜いたのが素晴らしかったです。

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