イングランドに“削られた”日本 ラグビー元日本代表・藤井淳が解説

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正確なキックで日本にプレッシャーをかけたイングランド代表SHアレックス・ミッチェル 【写真:ロイター/アフロ】

 ラグビー日本代表(世界ランキング14位)は18日、ワールドカップ(W杯)フランス大会の第2戦でイングランド代表(同6位)と対戦し、12対34で敗れた。日本はこれで1勝1敗。
 前半は9対13と競りながら、後半に突き放された原因はどこにあったのか?元日本代表の藤井淳氏(東芝)に話を聞いた。

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キックゲームで一枚上手だったイングランド

――試合のポイントになったのは?

 両チームともにキックを多く使った試合となりましたが、そこでイングランドの方が一枚上手でした。
 イングランドはSHアレックス・ミッチェル選手、SOジョージ・フォード選手が空いたスペースを見つけて、長短のキックを蹴り分けていました。また、セットプレーから単純に1人目で蹴るのではなく、ライン攻撃を仕掛けて日本のオープンサイドのWTBが前に上がってきたら後ろに蹴る…という工夫もされていて、レベルが高かったです。

 また、高く蹴り上げてボールを奪い合うハイパントが多かったのですが、そのこぼれ球への反応もイングランドは速かったです。ラグビーボールはどちらに転ぶのかわからないので運次第という部分もありますが、イングランドの選手たちの勤勉さが感じられたシーンでした。これは昨年12月まで指揮を執っていたエディー・ジョーンズ(現オーストラリア代表HC)さんに鍛え上げられたおかげなのかもしれません。

 日本は前半は競っていましたが、裏のスペースに何度も蹴り込まれることで心身ともに削られていく感覚だったと思います。自陣に長くいるのはプレッシャーもかかるので、その分、最後に足が止まってしまったように見えました。

――ハイパントの競り合いでは身長196センチのイングランドFBフレディ・スチュワードが活躍していました。

 彼は身長の高さもありますが、ハイボールキャッチに自信を持っていて、世界でもあまり見ないタイプの選手だと思います。日本がキックオフで良いボールを蹴っていましたが、本来は最後尾にいるはずのスチュワード選手が競り合いながらキャッチしていて、FWの役割もできる。日本にとっては厄介な選手でした。

奮闘したレメキ、松島、ラブスカフニ

緊急出場も安定感のあるプレーを見せた日本代表FBレメキ・ロマノラバ 【写真:ロイター/アフロ】

――日本も前半7分にFBセミシ・マシレワが負傷退場という緊急事態でしたが、代わりに入ったレメキロマノラバはいかがでしたか?

 素晴らしかったと思います。レメキ選手は過去に7人制でも活躍していて、とてもスキルフルで経験も豊富です。あの時間帯での交代は想定していなかったと思いますが、慌てる様子はまったくなく、堂々とした表情でグラウンドに入るメンタリティはさすがでした。
 イングランドが多彩なキックを蹴ってくる中で、レメキ選手とWTB松島幸太朗選手がしっかり対応したので、終盤まで競る展開になったと思います。

――日本のFWで目立った選手はいましたか?

 FLピーター・ラブスカフニ選手はすごかったです。危険なタックルによる出場停止処分が明けて最初の試合でしたが、相手を倒す力が強く、反応速度が速いのでピンチを何度も救っていました。
 一瞬であっという間に展開が変わるラグビーにおいて、ほとんどの選手はまず目で追って状況を確認して動く感じですが、ラブスカフニ選手は先に体が動いているように見えます。何度も「そこに追いつくの?」と驚かされました。

――セットプレーはいかがでしたか?

 スクラムはすごく良かったです。イングランドはここで優位に立つことができると考えていたと思いますが、しっかり戦えていました。マイボールの際にもっと押しても良いのでは…と思うほどでしたが、スクラムで押しに行くのはリスクもあるので、早めにボールを出したのだろうと思います。

 ラインアウトは精度を高める必要があります。日本としてはラインアウトからのサインプレーも用意していたはずですが、安定してキャッチすることができませんでした。
 もちろん、イングランドはラインアウトにおいて世界トップレベルですし、スティーブ・ボースウィックHCは2015年大会では日本のコーチを務めていましたから難しさはあったと思います。それでも、強豪に勝つにはラインアウトの成功率を上げなくてはいけません。

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