プロ野球2023シーズン終盤戦の12球団見どころ

「戦いながら強く」で堂々2位の広島 熱狂の秋へ、新井監督に“勝負師の血”は流れているか

三和直樹

つなぎの新4番と9月期待の高卒5年目

シーズン途中から4番に座って奮闘を続ける西川。首位打者の可能性も残している 【写真は共同】

 一方、打線で働きぶりが目立っているのが、プロ8年目の西川龍馬だ。これまでも抜群のバットコントロールを武器に評価を高めて実績を残してきたが、今季は不振のマクブルームに代わって6月中旬から4番に座ると、長打はなくとも“つなぐ4番”として機能。7月に右脇腹の肉離れで約1カ月の離脱を強いられたが、復帰後も安定したバッティングでチームに貢献し、ここまでリーグ2位の打率.316をマークしている。

 その他、中堅、ベテラン勢の働きも目立っており、30歳の野間峻祥、32歳の堂林翔太、33歳の菊池涼介、上本崇司、35歳の秋山翔吾といった面々が、チームの勝利を目指して懸命にプレー。近年、不振が続いていた34歳の田中広輔が打率.231ながら6本塁打を放って27打点と奮闘している点も、うれしい驚きだ。

 そして、9月以降の戦いを考えた際に、キーマンに指名したいのが、高卒5年目の23歳・小園海斗だ。打撃不振が続いて4月下旬から2軍生活が2カ月以上も続いたが、7月4日に1軍復帰を果たし、63試合出場で打率.271、5本塁打、23打点をマークしている。確実に調子は上がってきており、8月最後の試合でのマルチ安打から、9月は6試合で27打数12安打の打率.444と快音連発を続けている。この勢いを10月までキープしたい。

機動力を取り戻し、ファンの力も後押し

 数字的に先発陣の働きとともに目立つのは、チーム盗塁数の増加だ。昨季はリーグワーストの23盗塁だったが、今季は現時点で71盗塁とリーグトップを誇っている。カープ伝統の機動力を取り戻しつつあることが、粘り強く1点を奪い取る攻撃を可能にしている。

 そして、「取り戻しつつあるもの」は、それだけとどまらない。新型コロナウイルス感染症の影響で1試合平均1万人を切っていたホームゲームの観客動員数が、今季は1試合平均2万8365人まで増加している。リーグ3連覇を果たした頃の1試合平均で3万人超えまであと少しだ。これがCS舞台となれば、あの頃の“熱狂”を完全に取り戻せるはず。超満員のマツダスタジアムは必ずチームの力になる。

 その中で「戦いながら強くなっている」と胸を張る新井貴浩監督が、どのような采配を振るうのか。監督未経験ながら、持ち前の明るいキャラクターで選手たちと共闘し、チームを「家族」と表現する46歳の青年指揮官が、短期決戦のCS舞台で“勝負師”になれるかどうか。奇跡の逆転優勝へ向けても、まだ諦めてはいない。「熱狂の秋」へ。今季のカープは、最後の最後まで戦い続ける。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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