「相撲の内容は一切わからない」行司は力士のどこを見ている? 歴33年、木村銀治郎が語る大相撲の裏側
幕内格行司として土俵に立つ木村銀治郎 【日本相撲協会】
相撲大好き少年が行司になるまで
いざ入ってみると、いろんなことが想像を超えていました。結婚するまでの13年半は峰崎部屋に住んでいましたが、まずごはんがおいしいことに驚きましたね(笑)。お相撲さんたちは毎日こんなにおいしいごはんを食べているのか、と感動しました。あと、行司は習字が必須なんですが、これはいまでも苦手です。入ってから練習しましたが、かなり苦労しました。
裁きの土俵上は「非日常空間」
土俵上の裁きでは、どちらが先に負けるかを確認してから勝ったほうに軍配を上げるというのが鉄則です。常に両力士の膝から下を見ているので、相撲の内容は実は一切わかりません。帰ってきてから、自分が合わせた取組をスマートフォンの映像で見て、ああこんな相撲だったんだ、と初めて知ります。ちなみに、私は毎日2番合わせますが、いつも2番終わるとぐったり疲れて帰ってきます。緊張しているつもりはないんですが、かなり集中しているので、気を張っているんでしょうね。土俵上はまさに非日常空間。いまでもすごく不思議な感覚です。足腰が弱って土俵に立てなくなったら大変ですから、日頃からジムに通ったり、1万歩以上歩くようにしたり、場所中は生ものを食べないなど食生活に気を使ったりして、健康管理は常に意識しています。