W杯に臨む“日本代表の顔”はNBAベテラン 渡邊雄太が自覚するリーダーとしての期待

杉浦大介

母国を引っ張る牽引車として、結果を出さなければいけない戦い

渡邊の世代から富永啓生、河村勇輝といった若い世代にまで続く伝統を作るために、今大会では勝利という分かりやすい結果が求められる 【YUTAKA/アフロスポーツ】

 NBA ではロールプレーヤーの渡邊だが、やはり日本バスケ界を背負って立つリーダーなのだなと感じたエピソードがある。ネッツで過ごした昨季途中、NBAグローバル・アカデミー入りしている期待の星、ジェイコブス晶(横浜ビー・コルセアーズ)と対面した際のことだ。憧れの大先輩と言葉を交わし、当時まだ18歳(現19歳)だったジェイコブスは目をキラキラと輝かせていたが、後にその時のことを尋ねると、渡邊はこう言い放ったのだ。

「冗談抜きに、謙遜しているとかではなく、僕としては渡邊雄太なんかではなく、もっともっと上を目指して欲しいんです。今後、デュラント、アービングみたいな選手が日本から出てくることを僕は本当に夢見ています。(ジェイコブスは)ポール・ジョージ、ルカ・ドンチッチが好きで、彼らみたいなプレーを目指していると言っていました。僕なんかは早く追い越してほしい。いろいろな日本人の選手がNBAで活躍する姿を見たいなと本当に思っています」

 謙虚で自身を客観的に見ることができる渡邊らしい言葉であり、そんな人物だからこそ、これから先も長期視野で日本バスケ界の重要人物となっていくことが容易に想像できる。ただ、今はまだ、コート上のプレーで母国代表を引っ張る牽引車になって貰わなければならない。1年1年、確実に成長を続け、世界のトップと渡り合っている渡邊の存在価値は自身が思っている以上に大きいからだ。

「日本代表としてずっとプライドを持ってやってきました。この夏もまた日本代表の渡邊雄太を皆さんに見せることができたらと思っています」

 静かにそう語っていた渡邊は今夏、どんな姿を見せてくれるのか。これまで述べてきたとおり、日本代表にかける思いは強い選手だからこそ、近年の国際大会ではなかなか勝てていないことに悔しい気持ちは強いに違いない。
 2019年、中国でのワールドカップでは32チーム中31位、2021年の東京五輪でも“史上最高”と謳われながら予選リーグで3連敗。その後を受けて臨む今回のアジア開催のワールドカップは、渡邊が中心となった日本代表にとってどうしても好結果を出しておきたいビッグステージである。

 勝つためには、“現代のリーダー”に熱く引っ張っていってもらわなければならない。勇ましい背番号12の背後に若手が続いたときこそ、日本バスケットボールのより明るい未来が少しずつ見えてくるはずだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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