河村勇輝はバスケW杯で活躍できるのか? B1史上最年少MVPが立ち向かう高い壁
DFからの速攻を出せるか?
河村がDFの強みを発揮できれば日本は勝利に近づく 【(C)JBA】
もう一つ、W杯における大きなポイントはDFだ。日本代表が初戦で対時するドイツにはNBAのスタープレイヤーでもあるPGデニス・シュルーダー(ラプターズ)がいる。ドイツ代表でも攻撃の起点となるキーマンだ。
河村は代表合宿がスタートした直後から、シュルーダーへの意識を口にしていた。
「オフェンスよりも、DFにフォーカスは合わせたい。特にシュルーダー選手とのマッチアップは、僕の中で一ついい経験になると思うし、その結果がチームの結果にもつながってくる」
実はDFも河村の大きな武器だ。彼の特徴はフットワークを生かした食らいつく対人守備で、前から距離を詰めて振り切られずに「煽る」対応は抜群だ。昨季では1試合平均1.5本のステイールを記録しているが、これはB1のPGでも最多レベル。攻守にアグレッシブなホーバスHCのスタイルにもマッチする要素だ。
高い位置から相手にプレッシャーをかけ、ターンオーバーを誘ってファストブレイク(速攻)に持ち込む展開が、河村をもっとも生かす展開だろう。もちろん相手はそれを出させない手を打ってくるが、スピードとプレッシャーDFについては「通用する」と太鼓判を押していい。
W杯は間違いなく有益な経験に
強豪との対戦が河村と日本バスケの未来につながる 【(C)JBA】
河村は今オフに横浜BCと3年契約を締結したが、彼自身は海外挑戦への意欲を述べ、クラブ側もそれを容認している。実際に米大手代理人事務所ワッサーマンとも契約し、次のステップに向けた準備を開始しつつある。アメリカのNBA情報サイト『HoopsHype』が昨年11月に発表した海外のプロリーグでプレーするNBAドラフト候補ランキングにも、その名前が入っていた。
彼にとってW杯は自らのプレーをアピールする場になるか? 成長の糧となる試練になるか? おそらくその両面がある大会となるだろう。
河村は以前の取材でこう述べていた。
「W杯で試合に出させてもらうことになれば、世界基準の中で見えてくる課題と、逆に強みとなるものが見えてくる大会になる」
課題と強みのどちらがより色濃く出る大会になるのか、それは分からない。彼の海外進出がいつになるのか、そもそも実現するのかも現段階では見通せない。ただW杯が特別なチャレンジになることはハッキリしている。Bリーグでは別格のバスケIQを発揮している河村だが、国際舞台となれば話は違う。壁を乗り越えてきた彼にとっても、W杯は今までにない“高さ”だろう。
しかし自らの成長に貪欲で、壁が高いほどそれを糧にしてきた青年にとって、W杯の戦いはきっと有益なものになる。それは明確に言い切っていいはずだ。