“甲子園の星”西武・山田陽翔の現在地 約半年のプロ生活と「2、3年後には必ず」の誓い

三和直樹

初めて親元から離れての寮生活

『若獅子寮』で先輩たちに可愛がられながら、プロとして勝負できる肉体と技術を磨いている 【スポーツナビ】

――実際に西武に加入して、チーム自体への印象、イメージは変わりしましたか?

 元々、自分が思っていたのは「明るい球団」というイメージでしたけど、実際に入ってみると「すごく明るい球団」でした(笑)イメージ通りというか、イメージ以上でした。

――『若獅子寮』は2019年にリニューアルした新しい施設ですが、住み心地はいかがですか?

 すごく快適です。過ごしやすいです。高校の時は自宅から通っていたので、寮生活自体が初めてなんですけど、ホント、周りの先輩方が優しくて、いろいろと気にかけてくれて、可愛がってもらっています。

――入寮の際は特注の“うつぶせ専用枕”を持って来たそうですが、他に持ってきたものはありますか?

 枕以外だと、(漫画「SPY×FAMILY」の)アーニャのグッズ、ですかね(笑)。でもやっぱり枕が大事ですね。

――仲の良いチームメイトもできたのではないですか?

 はい。みなさんに良くしてもらっていますけど、特に滝澤(夏央)さんによくご飯に連れていってもらっています。あと、山村(崇嘉)さんだったり、児玉(亮涼)さんだったり。よく食べに行くのは焼肉です。焼肉はみんな好きですから。僕はタンとハラミ。車に乗せて連れて行ってもらっています。車の免許はまだ取れていないので、それはオフシーズンの楽しみとして取っています。

――初めて親元から離れての生活とのことですが、ご両親から連絡はありますか?

 自分が投げた時に「どうやった?」って聞かれますね。僕は暑くなるとなかなかご飯をたくさん食べられなくなるので、この間は実家から「これ食べろ」って、僕が昔から好きだった『クラブハリエ』のバームクーヘンとリーフパイが送られて来ました(笑)。ありがたいです。

――滋賀と埼玉で違いを感じる部分はどこでしょう?

 まぁ、とにかく暑いですね(苦笑)。あとは電車がたくさんあるので便利です。滋賀にいた時は琵琶湖線でしたけど、それに比べると多いですね。

――母校の近江は今年も甲子園出場が期待されます。1つ下の代で、やはり気になると思いますが?

 気になりますね。1つ下の3年生たちは、自分も一番、気にかけていた後輩たちなので、頑張って欲しいです。スケジュールが合えば応援にも行きたいんですけど…。オールスター期間に休みがあるので、そこで地元の仲間と久しぶりに会いたいなと思います。みんな成長しているでしょうけど、僕も鍛えたところを見せたいですね。

「“いつか”と思っていてはどんどん先になってしまう」

背番号36、西武の山田陽翔のプロ生活はまだ始まったばかりだが、1軍デビューへの思いはすでに強い 【(C)SEIBU Lions】

――高校時代は打撃でも注目を集めましたが、バッティング練習は?

 今は一切、やってないです。打者への未練はないですし、投手として勝負したいですから。でも、バッティングをやらなくなってから体の切れが悪くなったようにも感じるので、練習の中の一つのメニューとして、少し打つ程度にはやっていきたいなと思っています。

――西武投手陣の先輩たちの姿を見て驚いた部分や盗みたいと思う部分はありますか?

 (高橋)光成さんのストレートの威力、精密さというのは本当にすごいですし、松本航さんの柔軟性にも驚きました。1軍でも先発ローテに入っている方々は、よくリカバリーをしにこっち(選手寮と隣接するトレーニング施設)に来るので、その時はキャッチボールをしているところからよく観察して、何か少しでも盗めるようにしたいなと思いっています。


――先輩たちからアドバイスされることはありましたか?

 いろいろありますけど、すごく覚えているのは、今井(達也)さんですね。キャッチボールをさせてもらった時、それまで自分はずっとセット(ポジション)の時に足を平行に構えていたんですけど、僕に少しインステップする癖があるので、「その癖を活かすなら少し足を開いて構えた方がいいよ」と言ってもらって、それを取り入れたら、すぐに良くなりました。さすがだな、と思いました。

――そういうプロの環境の中で自分の実力が伸びて来たと実感しているのではと思いますが?

 いや、まだそこまでしっかりとした実感は持てていないです。でも今は3軍の試合に投げさせてもらっているので、そこで自分のやりたいことにどんどんチャレンジしていきたい。それができる環境だと思うので、1試合1試合しっかりと課題を持って、中途半端なことだけはしないように、思い切って自分のしたいことをやり切りたいと思っています。

――今後、どの部分を伸ばして、将来的にはどんなピッチャーになりたいと思っていますか?

 今は単純にいい球を投げたいということを思っています。スピード、球威、回転数を含めて、いい球を投げたい。1軍の舞台で活躍できないと意味がないので、1軍で通用するボールをまずは持たないといけない。ストレートなら今よりも球速を上げて、アベレージを高くしたい。そして変化球も磨く。ストレートでも変化球でも、自分の武器となるボール、自信になるボールをしっかりと身に付けたいと思っています。

――ようやくコロナ禍による規制も解かれて、応援も通常通りに行われるようになりました。ファンの声援はどう感じていますか?

 ファンの方の存在というのはやっぱり大きいですね。ファームにもいつも足を運んでくださっている方がいますし、ありがたいです。投げている時もスタンドからの声援は聞こえてきますし、間違いなく自分の力になっていると思います。特にピンチの時とかは心強いです。

――ベルーナドームのすぐ隣に選手寮があります。試合開催日には1軍の試合を応援するファンの歓声が聞こえてくると思いますが?

 そうですね。球場からのファンの声を聞くと、自分もいつかはそこでやりたいって思いますね。でも、“いつか”と思っていてはどんどん先になってしまう。2、3年後には“必ず投げたい”と思っています。その姿をファンの方々に早く見てもらえるように頑張りたいです。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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