名古屋が育んだ不屈のDF 藤井陽也はひたすらに前を、上を向く

今井雄一朗

「明るく帰ってもらわなきゃ」。隠れ“お祭り男”の本領発揮なるか

5月14日のJリーグ30周年記念試合では鹿島に完敗。今度のホームゲームでは必勝を誓う。 【Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images】

 8月5日、名古屋グランパスが毎夏の恒例として行う一大イベント「鯱の大祭典」の初戦を飾る、国立競技場での“ホームゲーム”である。今季は鹿島とのJリーグ30周年記念試合ですでに公式戦を経験しているが、完敗の試合に長谷川監督は「56000人の前でちょっと“よそ行き”になってしまった」とその環境の違いにも敗因を探していた。だが、藤井は「そこに影響を受けるタイプではないので」と泰然としたもの。多くの小中学生が招待される試合とも知ると俄然、やる気をたぎらせ来るその日を展望した。

「大観衆の試合はやっぱり雰囲気が全然違いますし、特にホームでたくさんのお客さんが来てくれたら、その大きな声援で自分のモチベーションもより高くなります。5月の国立での試合は相手のサポーターも多かったですけど、名古屋のサポーターもたくさん来てくれました。大歓声の中で試合ができる楽しさは本当にありますし、大舞台というのは僕自身としては楽しめますね。
 僕が子どもの頃、グランパスの試合を観に行ったときはとにかく勝ってほしい、ただただグランパスの勝利を願っていました。誰か選手のプレーを見るというよりは、単純に観戦を楽しんで、『グランパス勝て!』っていう感じで観ていましたね(笑)。だから負ければ暗い気持ちで帰っていましたから、今回ももちろん勝つ試合を見せたい。その中で監督がいつも言っている“熱い試合”を、そういう気持ちのこもったプレーを全員で見せられたらいいと思います。せっかく名古屋から来てもらうんだから、明るく帰ってもらえるように頑張らなきゃ」

 新潟にはアウェイで勝利しているが、「相手に退場者が出るまではもうボコボコにやられていた」と言い、強敵であることには間違いない。藤井は「だからあのときとは違うグランパスを見せたい」と意気込み、自らのプレーの強度やダイナミックさでチームを引っ張りたい、鼓舞したいと誓う。大歓声に乗せられているときには何でも上手くいく気がするとも言い、そのバランスを取らなくちゃと自制する姿は“あの頃”の藤井とは見違えるようである。

 このタイミングからは各チームが夏の補強で迎え入れた新戦力を次々とデビューさせていくことにはなり、名古屋にも前田直輝と中島大嘉という期待の選手たちがいる。だが、チームを支え、鼓舞する主力のひとりとして、努力の才能を実らせた男、藤井陽也にも注目してほしい。彼もまた、今や名古屋の“顔”である。

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著者プロフィール

1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。以来、有料ウェブマガジン『赤鯱新報』はじめ、名古屋グランパスの取材と愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする日々。

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